要因①下水管の「太さ」
事故があった現場の地下には、どのような下水道構造物があったのだろうか。それを調べていくと、専門家ではない筆者にも奇妙な点が見えてきた。注目したのは、陥没が起きた交差点の上流側の下水管の「太さ」である。
図表1を見てほしい。
緑色の線が、埼玉県が管理する下水管である。陥没現場に至るまでの下水管の太さは、直径3mである。不思議なのはそこに至るさらに上流側の下水管の太さで、直径4.25mと直径2.4mの2本の下水管が合流している。この不思議さをお分かりいただけるだろうか。川に例えるなら、幅4.25mと2.4mの支流が合流し、幅3mの本流になったということ。本流のほうが小さくなっているのだ。
佐藤教授によると、この状況が硫化水素の生成を助長した可能性があるという。
「下水の量が同じだったとしても、直径4mの下水管より、直径3mの下水管を流れるほうが水深は深くなりますよね。現場ではさらに直径2mほどの下水管からも下水が合流しているので、水深はさらに深くなります。そうなると、底のほうの下水には酸素が供給されにくくなります。硫化水素は酸素が少ない条件下で生成されますから、陥没現場の上流側は、構造的に硫化水素が生成されやすかったと言えるでしょう」
要因②エリアにおける「地点」
次に陥没現場の場所に着目した。ここは埼玉県の中川流域下水道に属するエリアで、エリア内には121kmもの下水管が埋設されている。そのほぼ最下流に現場は位置していた。
佐藤教授によると、下水中には多くの細菌が含まれており、下水に含まれる酸素を使って活動している。下水の流下距離が長くなればなるほど酸素は細菌に取り込まれ、下水に含まれる酸素は減る。その結果、酸素が少ない状況が形成され、前述したように硫化水素が生成されやすくなるのだ。しかし、実は硫化水素が生成されたとしても、それが下水中にとどまってさえいればさしたる問題はないと業界では言われている。ではなぜ、今回の現場では下水管の腐食が進んだのであろうか。

