要因③下水の「乱れ」
硫化水素そのものには、実は下水管を腐らせる性質はない。それが空気中に放出され、物体の表面に沈着すると、細菌の働きによって硫酸に変化する。この硫酸こそが、下水管を腐食させる。つまり、陥没現場には、硫化水素を水中から空気中に解き放つなんらかの要因があったということだ。
では、どのような要因で硫化水素が空気中に放出されたのだろうか。
佐藤教授や今回ヒアリングした下水道の専門家によると、硫化水素が放出されるのは、下水の流れに「乱れ」が生じた時だという。そこで再び、道路陥没が起きた交差点周辺の下水管の構造を調べてみた。
図表2を見てほしい。図表1の点線カ所を拡大したものだ。
調査の結果、交差点の下、おそらく道路が陥没したすぐ隣に、「人孔」と呼ばれる構造物があることが分かった。「人孔」とは一般にはマンホールと呼ばれ、下水管を点検する際に使われる。人が中に入って作業ができるように空洞になっており、円形のものもあるが、ここには「ボックスカルバート」と呼ばれるコンクリート製の四角い空洞(矩形と呼ばれる)が入っていた。この「ボックスカルバート」の水平方向の断面は縦横11m×10.5m、高さは10m近くもある(流域下水道管の破損に起因する道路陥没事故に関する復旧工法検討委員会)。
こうした「マンホール」は、下水管が曲がったり、複数の下水管が合流する地点に作られる。
複数の下水管から下水が流入
まず、曲がりを見ていこう。この現場でも地図上の目測ではあるが135度ほど下水管が曲がっている。佐藤教授によると、それほど大きな角度ではないが、下水の流れに乱れが生じやすいという。
次に、下水管の合流についてみると、この「マンホール」には先ほど触れた県が管理する直径3mの下水管のほかに、もう1本の下水管が合流していることが分かった。図表2でいうと紫色の線で、これは八潮市が管理する下水管である。つまり、これら2本の管から下水が「マンホール」に集まり、今回の道路陥没を誘発した直径4.75mの下水管へ流れ下っていく構造になっているということだ。
ちなみに八潮市が管理する管はマンホールの直前で2本が合わさって1本になっているようだ。佐藤教授によると、複数の下水管から下水が流入していること、また、「マンホール」から出ていく下水管のほうが太くなっていることで、下水の流れに乱れが生じて硫化水素を放出しやすい環境になるという。

