本当に大切なのは、自分の体の声を聞くこと

コレステロール値についても同様で、値が高いから健康状態が悪化するかどうかは不明です。少なくとも日本人の調査結果としてコレステロール値と健康状態のよしあしを関連付ける証拠は存在しません。

これが健康診断の数値が悪かった人に対して長期間にわたり追跡調査を行い、病気との関連性を調べていればよいのですが、日本では追跡調査をほとんど行っていないのが現状です。健康診断の結果で一喜一憂しても、実際はさほど意味はないのです。

本当に大切なのは、自分の体の声を聞くこと。健康診断の数値がよいからと安心し、体調不良を見過ごして対処が遅れては本末転倒です。健康診断は受けなくても、なにか体に変化や異常を感じた時点で早めに病院へ行くように徹底する。そのほうがよほど安心です。

受ける価値がある健康診断はこの2つ

健康診断のなかでも私が受ける価値があると考えているのが、脳ドックと心臓ドックです。これらは心筋梗塞やくも膜下出血など突然死のリスクがある病気を発見するために役立ちます。

心臓ドックは心臓の周囲を取り巻く冠動脈について、動脈硬化が進み細くなっている箇所があるかどうかを診ることができます。万が一詰まりそうになっている場所が見つかれば、血管を広げる治療を受けて心筋梗塞を予防できるのです。

脳ドックで行われるMRI(磁気の力を利用して脳内を撮影する検査)では、動脈の壁が拡張して、血管が膨れ上がってしまう動脈瘤の発見に役立ちます。動脈瘤は放置するとやがて破裂し、死に至る危険があるものです。早期発見できれば予防治療を受けられます。

医療スキャン モニター
写真=iStock.com/baranozdemir
※写真はイメージです

血液検査の異常値は、あくまで将来的に心筋梗塞になる可能性が「確率的に高い」としかいえません。対して心臓ドックと脳ドックは、どちらも今の状態を的確に診断するものですから、診断される側としても信頼性が高い検診だといえます。

ちなみに、日本の血管内治療の技術は世界トップクラスで、海外の要人が治療を受けるために来日するほどです。今後、心臓ドックと脳ドックの重要性がより増していくでしょう。

ただし、ステント術などを研修医など未熟な医師に担当させる病院があるので、心臓ドックを受けても死亡率が下がらないということが、日本でも海外でもいわれています。

「いい医者、うまい医者を探す」(これもAIでできます)ということとセットだということは知っておいてください。