投資家の言論力とは

時の政権や日銀が、株式市場や為替などのマーケットと向き合う動向が見られます。日本が利上げに踏み切ると発表した後に、2024年の8月は大幅に株価が下落しました。それに対して日銀は、利上げは急がないとコメントを修正しました。

政権のトップになった人物は、それまでアベノミクスを否定し、利上げをするべきだという発言をしていても、トップになった時点でマーケットが混乱すれば、従前の自分の思想に関わるコメントを修正しています。

ここから読める、社会の風の変化は2つです。

1 投資家の言論力=政治は、個人投資家の声を受け止めるようになった
2 サイレント・マジョリティー=投票行動に変化
自民党が、それに手を打っている

具体的には、どういうことでしょうか。

これまで、特定の業界団体が選挙票をベースに政治に影響を与えてきました。しかし、投資が中間層、低所得者層に解放されたことで、現代における個人投資家の影響力は、団体の形ではないものの、ネット上で強力な発言権を持つようになったと理解しています。私は、これを、個人投資家たちの「言論力」と表現します。

オフィスでノートパソコンで作業する物思いにふける男性
写真=iStock.com/kokouu
金融庁が進めてきたNISAの普及は、単に個人の投資だけでなく政治にも関心を持たせ、もの言う個人投資家を増やした。※写真はイメージです

個人投資家たちは、豪遊するために、NISAなどの投資をはじめたわけではない。所得が増えないなかで、老後の生活資金確保に強い不安を抱え、少額の投資を通じて資産を増やしたいという切実な願いを持っています。この層が選挙権をもち、政府も無視できない存在となっているのです。我々は、投資を通じて、政治に関心を持ったことになりました。

日本の大人たちは、若い層が選挙に関心を持たないと嘆いてきました。しかし、金融庁が進めてきたNISAの普及は、単に個人の投資だけでなく政治にも関心を持たせ、もの言う個人投資家を増やしたのです。実際に、国民から政府に対するガバナンスが効いたことで、様々なコメントを修正したことに至ったのならば、これは、民主主義を活性化させたと言えるのではないでしょうか。

「投資は富裕層が行う」という時代は終わりました。圧倒的な中間層、低所得者が切実な思いの末に投資をする時代になったのです。