学校では「総理」と呼ばれる
ここで、「二十世紀最大のスパイ」といわれるゾルゲの略歴を紹介しておこう。一八九五年、石油業を営む裕福なドイツ人の父とロシア人の母の混血としてアゼルバイジャンのバクー郊外で生まれたゾルゲは、三歳の時、一家でドイツに移った。ベルリンでの少年時代について、ゾルゲはこう回想している。
「富裕なブルジョア階級にみられる平穏な少年時代を過ごした」「運動競技や歴史、文学、哲学、政治学では、クラスの誰よりも抜きんでていた」「時事問題は普通の大人よりもよく知っており、学校では『総理』と呼ばれた」「父は正真正銘の国家主義者だったが、私は政治的な立場はなかった」(獄中手記)
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