「首を使わない視線の動かし方」が重要

前のページで、視線と骨盤の関係を説明しました。では実際に、それを体得する動きをやってみましょう。とても簡単です。

顔の前にどちらかの手を持ってきて、視線の方向に人差し指を向けてください。さらに、もう片方の手を自分の胸(胸骨)の前に持ってきて、同じように胸の前方向に人差し指を出してください。この顔の前の人差し指と、胸の前の人差し指が同じ方向を向くように、上を向いたり、下を向いたりしてみてください。これが、整った人の体の動きです。

【図表4】視線と胸骨の向きを合わせる
視線と胸骨の向きを合わせることで、上手く骨盤を使うことができる(出所=『読むと「全自動」で健康になるすごい本』)

上を見るときは胸も上を向く、下を見るときは胸も下を向く。左のときも、右のときも同様に。常に目線と胸の向きが同じになるように、体を使ってください。これによって「首を使わない」動きになります。実際には、さまざまな場面で多少は首を使います。

ただし、それはあくまで最後の「添え使い」くらいの感覚で、どうしても可動域が足りないときにだけ首は使うものです。左側から誰かに呼ばれたら、胸ごと視線をそちらに向けるのが本来の動きです。

これは相手への礼儀にも直結しますね。整体的な知識がなくても、礼儀作法の面でこれを行っている人は、知らず知らずに整体的に正しい動作を行っていたのです。首だけでそちらを向くのは相手を軽んじている態度にもなります。「うん」とうなずく動作も同じです。首だけでうなずかず、胸と一緒に視線を動かすようにしてください。立った状態なら、股関節やひざまで使われることが実感できるでしょう。

視線の移動だけで、体全身を使うことができる

この動作により、首を使う頻度が大幅に減ると、首が守られます。

首ばかりを動かすと、その都度不安定な状態になり、結果として首を支える頻度が増えます。首をかたくし、その土台である肩周辺の強度も必要になってくるので、首と肩がこります。首を使わない動きをするだけで、むだなコリをつくる必要もなくなります。

さらに、体全体を使って視線を動かすだけで、冗談抜きでやせていきます。本当ですよ。毎日の生活の中で、視線の移動は無限に行われています。今までは首だけヒョイと向けていた人が体全体で動くようになったら、そりゃやせるでしょうに。

24時間365日、その動きで視線を移動させればその効果は計り知れません。これが本来の視線の動かし方です。一度体で覚えてしまえば、首だけを使った視線移動が逆に気持ち悪くなります。まずはやってみて、体に染み込ませてください。