転職を考えている人の特徴
転職を考えている多くの人が、Tとよく似た面を持っています。
それは、本人は「まだ自分は実力を出していないだけ」と考え、環境が変わればどんな出世の可能性もあると思っている一方で、周囲の人たちは、本人の持つ力の程度や限界を早々と悟っているところです。
本人は何ら行動を起こしていない場合でも、根拠なく無限の可能性を信じているものです。また、もちろん周囲の思い込みも当たることばかりではありません。
私の勤めていたメーカーでも、従業員数は数百人といった規模でしたが、あまり目立たなかった社員が、転職後に新天地で大活躍をしたり、全国に名をとどろかせる成功者になった話は、一度ならず耳にしたものです。
それでも社会人としてどのくらい成長するかについて、本人よりも周囲のほうがわかっているのは、めずらしいことではなく、転職を考えるよりも、今勤めている会社で、本気になって仕事に取り組むほうが、本人にとって得策と思えることは多いのです。
環境を変えるよりも、むしろ本人の意識を変えることが必要なのですが、周囲の人たちは、それを伝えても通じなさそうな相手に、わざわざそんな話をするものではありません。
おもしろい業務とは
相談者の方のおっしゃる「おもしろい業務を任される」とは、どういうことでしょうか。
たとえば、ガンガン伸びている市場での営業は、売れない市場での営業活動に比べておもしろいものでしょう。
釣竿を投げ入れたら、魚がどんどん食いついてくる。上司にそんな場所へ連れて行ってもらって、釣り糸を垂らす。
そんな仕事をあてがってもらうことが、「おもしろい業務を任される」ことでしょうか。
たくさん買ってくれそうな顧客を担当させてもらう、ヒットしそうな商品の開発のメンバーに加えてもらう――もし、そんな期待をしていて、そうでなければやりがいを感じないと言うなら、かなり厚かましい要求をしているのではないでしょうか。
私はコンサルタントになりたての頃、日本にはなかったコンサルティング商品の調査でイギリスへ出向き、それを使わせてもらうのに、結構たいへんな思いをして、何度も通いながら交渉を重ねていたことがありました。
ようやく日本で使わせてもらえるようになり、それを採用してくれるクライアントも見つかったら、同業者が自分にもかかわらせろと群がってきたり、邪魔をしに入ってくる人もいたり、なかなかスムーズに進まない段階を経て、ようやく収益が上がるようになっていきました。
おもしろいとか、やりがいがあると思えるのは、その商品が知られるようになり、顧客のほうから問い合わせをくれるようになってからのことです。