利他は自分に返ってくる

ソフトバンクの孫正義会長からの誘いは、天の導きだと感じたそうです。

同社での経験が、起業につながっていきます。

人は、生まれたときから、この世の何かから使命を与えられていると思う、と北尾さんは語っていました。それを、起業した49歳で自覚するのです。すると、それまでに起きたことが、すべて与えられた天命に向かって起きていたことだったと感じたそうです。

だから、どんな仕事も一生懸命にやらないといけない。

どんな職場にいても、努力しないといけない。

それが、後の大事な肥やしになるからです。すべてを受け入れるのです。

こうも語っていました。正しく生きようとすること。人間性を磨くこと。それが、他を利する。いつかそれは、自分に戻ってくる、と。

アニメに関心がなかった鈴木敏夫さん

2024年3月、『君たちはどう生きるか』での2度目の米国アカデミー賞受賞が大きなニュースになった、スタジオジブリの宮﨑駿はやお監督。その懐刀、プロデューサーの鈴木敏夫さんへの取材もまた、忘れられないインタビューの一つです。

通された応接間で大きなテーブル越しにインタビューをしていたのですが、鈴木さんの向こうにある大きなガラスの棚には、本やらDVDなどに混じって、何やらキラキラした金色に光るものがあったのです。

終わってからおそるおそる、「もしや、あれは?」と聞くと、なんと『千と千尋の神隠し』のときのアカデミー賞のオスカー像だったのでした。

オスカー像
写真=iStock.com/Pitroviz
※写真はイメージです

しかも「あ、見ますか?」と棚から取り出し、「持ってみますか?」「写真に撮ったら」などなど、とんでもないものをあり得ないほど気さくに触らせてもらったのでした。このときの写真は家宝になっています。

そんな鈴木さんのキャリアのスタートは徳間書店。学生時代、特にやりたいこともなく、将来はどうしようかと悩んだ挙げ句に浮かんだのが、文章でした。アルバイトなどで書いたことがあって、上手い下手は別にして書けた。それで出版社を受けたら、通ってしまったのだ、というのです。