「持ち家」と「賃貸」、インフレ時代にはどっちがお得?

ここまでの話を踏まえて、「持ち家にするか、賃貸にするか」という住居費の永遠のテーマについて考えてみたいと思います。

このテーマを私がX(旧Twitter)などで発信をすると賛否両論のコメントで盛り上がります。答えが出せない宗教論争みたいな側面があるかもしれませんね。

まず結論としては、私は「持ち家がお得」だと確信しています。

これまでのデフレ時代は、持ち家と賃貸は一長一短なところがあり、一概に答えを出しにくい状況だったのですが、これから続くインフレ時代においては、持ち家派が有利になります。

具体的に、「35歳で7000万円の物件を購入する場合」と、「賃料20万円の物件を借り続けた場合」を比較してみましょう。物件は、東京・世田谷にある築10年、駅徒歩5分の2LDKの中古マンションを想定しています。住宅ローンは諸費用合わせて7560万円借りるものとします。

返済が終わる35年間でのコストを単純に比較した場合、実は賃貸のほうが安いことがわかります。図表5の通り購入した場合は約1億円、賃貸は9000万円弱となり、賃貸のほうが安いです。

築45年の中古マンションでも資産になる

ですが、購入した場合は「物件を保有できる」という非常に大きな強みがあります。

事例の物件を購入した場合、35年後は築45年のマンションを資産として保有することになります。最近の世田谷区の取引事例では、築45年でも約4000万円で売却することができ、持ち家は相応の資産ができているといえます。しかも持ち家なら住み続けることもできますから、終のすみかも得られている状態です。

さらに、購入した場合は、住宅ローン減税と団体信用生命保険(団信)という強力なメリットがあります。後ほど詳しくお伝えしますが、これらのお得な制度のおかげで住宅ローンはむしろ「借りると儲かる」のです。こうした強みは、賃貸にはない持ち家ならではの特徴です。

一方、賃貸の場合はというと、残念ながら家賃をいくら払っても住んでいる家があなたの資産にはなることはありません。35年住み続けた後も家賃を払い続ける必要がありますし、高齢になるとそもそも家を借りにくくなるので、終のすみかとしては懸念があります。実際、とある大家さんは「孤独死や認知症による近隣トラブルを懸念し、65歳以上はお断りしている」といっていました。