一生賃貸で暮らすメリットはあるか

公平を期してお伝えすると、賃貸にまったくメリットがないわけではありません。

塩澤崇『金利が上がっても、住宅ローンは「変動」で借りなさい 1時間でわかる「新時代のお金の常識」』(ダイヤモンド社)
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賃貸は大家が設備の入れ替えコストを負担してくれますし、何より、他の物件へ引っ越しをしやすいのが魅力ですね。

また、「住む場所を選べる」という点でも賃貸のほうが有利です。2022年に東京都23区内にある2LDKの物件を調べたところ、新築が約3000戸、中古が8500戸程度でした。この二つをあわせた1万戸強が購入する場合の選択肢です。一方で賃貸はなんと5倍の5万戸もあります。

逆にいえば、賃貸のメリットはこれくらいですから、頻繁に引っ越す予定のない人や、持ち家の選択肢で満足できる人であれば、賃貸を選ぶ理由はほぼなくなります。シンプルに、資産形成という金銭面で合理的判断をするなら、持ち家一択でしょう。

話をまとめると、持ち家には賃貸にはない次のメリットがあります。

① 資産形成になる
② 高齢期の生活の基盤になる
③ 住宅ローン減税や団体信用生命保険を使える

なお、もし「今は不動産価格が上がっているから賃貸に住んで様子を見よう」とお考えなのであれば、その作戦はおすすめしません。まず、家賃は不動産価格と連動します。大家さんが「物件価格が上がっているから購入を様子見する世帯が増えるだろうし、家賃を高めに設定しても借りてくれるはずだ」と考え、家賃を強気で設定するからです。

そうなると、図表6のように、将来的には契約更新や引っ越しのたびに家賃が上がって家計支出が増えるリスクがありますし、買おうと思っていた物件も値上がりして一層買いづらいというダブルパンチが発生してしまいます。不動産購入にはリスクは伴いますが、そのリスクを取らないリスクもしっかりと考えるべきです。

塩澤 崇(しおざわ・たかし)
住宅ローン比較診断サービス「モゲチェック」取締役CMO、住宅ローンアナリスト

モルガン・スタンレー証券にて住宅ローン証券化を担当。その後、ボストン・コンサルティング・グループにて大手金融機関などを中心とした戦略コンサルティングに従事。現在は住宅ローンアナリストとして、テレビや新聞などに登壇。TwitterやYouTubeで住宅ローンの最新情報を発信中。SNSでは「モゲ澤」という別名も。