「日本人は多相性睡眠気味」?

適度な多分割睡眠は生物にとって自然な眠りに近く、現代人の私たちが受ける印象ほど奇妙で特殊な眠り方ではない、ということが分かっていただけたと思います。

角谷リョウ『一日の休息を最高の成果に変える睡眠戦略 世界のビジネスエリートが取り入れる「7つの眠り方」』(PHP研究所)
角谷リョウ『一日の休息を最高の成果に変える睡眠戦略 世界のビジネスエリートが取り入れる「7つの眠り方」』(PHP研究所)

ちなみに、欧米の論文や記事で、「日本人は住宅事情が悪いので家で十分に眠れず、電車の中や会議中に眠ることが認められている。彼らは今も多相性睡眠だ」といった論考を目にすることがあります。

「東洋人=原始的」というステレオタイプが透けて見えて、かなり失礼な言い方だとは思いますが、「日本人は多相性睡眠気味」という考察には、なんとなくうなずいてしまう部分があるのも確かです。

やはり、欧米人から見ると日本人は今なお働き過ぎで、夜十分に眠ることもできていないと見られているのでしょう。

1日のどこかで3時間寝ればOK

授乳や職業上の制約などで、「細切れの睡眠がつらい」と感じている方は大変多くいらっしゃいます。

このような方は、実際に十分な睡眠が取れていない面もある一方で、もしかすると「睡眠は夜まとめて取るもの」という現代人の常識にとらわれ、「自分は夜まとめて眠れていないから、つらい」という錯覚が混じっている可能性があります。

本書の第1章でご紹介した短眠戦略は、夜の睡眠を5時間に減らし、日中に25分間の仮眠を取ることで、フルパワーで長時間働くというものでした。

ここで紹介する多分割睡眠は、この応用編です。

まず、主となる睡眠は3時間。

この睡眠は夜でなくても問題ありません。1日のどこかで、3時間のまとまった睡眠ができればOKと考えてください。

この3時間で深いノンレム睡眠を取り、脳と体の疲れを解消します。

寝ている人の脳のイメージ
写真=iStock.com/Hank Grebe
※写真はイメージです

あとは15分程度の短い仮眠を必要に応じて数回取れば、眠気やパフォーマンス低下を感じることなく、活動を続けることが可能です。

多分割睡眠は、すべての方におすすめする戦略ではないとお伝えしましたが、否応なく多分割睡眠に近い眠り方をいられている方はたくさんいらっしゃいます。

そんなみなさんに、「夜まとめて寝る」から、「1日のどこかで3時間寝る」へと、意識を変えていただきたいのです。

常識を取り払い、新しいルールを決めるだけで、睡眠へのストレスが少しは解消するのではないでしょうか。

角谷 リョウ(すみや・りょう)
スリープコーチ

上級睡眠健康指導士、日本睡眠学会会員、日本認知療法・認知行動療法学会会員、日本サ ウナ学会員。ライフリー株式会社を立ち上げ、NTTドコモ、サイバーエージェントなどの法人を中心に、14万人の睡眠改善をサポートしてきた実績をもつ。短期間かつ高確率(受講者の90%以上)で効果を感じられる実践法を得意とする。最近の趣味は瞑想。瞑想でアルコール依存症を克服し、月2回・適量飲酒にまで改善した。