死んだと思ったヒグマに頭を噛まれて頭蓋骨骨折…増え続けるヒグマと命がけで対峙するハンターが見た“危機”と“異変”(伊藤 秀倫) #2

地元猟友会がクマ駆除を辞退…渦中のハンターが語った“本音”「ヒグマ相手に日当8500円では…」「ジジイを舐めている」〉から続く

〈猟友会がクマの駆除辞退 「この報酬ではやってられない」「ハンターを馬鹿にしている」北海道奈井江町〉

奈井江町は札幌と旭川のほぼ中間に位置する人口約4700人の小さな町だ。その奈井江町が、町内でヒグマなどが出没した際の対応を担う「鳥獣被害対策実施隊」への参加を地元の猟友会に呼びかけたところ、報酬面などで折り合いがつかず、猟友会がこれを辞退したという。5月21日にHTB(北海道テレビ)が報じたニュースの中で、北海道猟友会砂川支部奈井江部会で部会長を務めるハンターの山岸辰人(72)は辞退の理由をこう語っていた。

〈やっぱりヒグマは相手が違う。鉄砲持っているからって、米軍の特殊部隊相手にするようなもんだよ。この条件ではちょっとやってられない〉

ヒグマ(北海道斜里町) ©時事通信社

町側が提示した実施隊の日当は4800円、ヒグマ対策の場合は3700円を加給、発砲した場合は1800円が加給されて最大で1万300円というものだった。

今回の一件で彼が最も伝えたかったのは、「ハンターにとってヒグマの駆除というのは、命がけの仕事であることを理解してほしい」ということに尽きる。町役場の対応をあげつらうことは、山岸の本意ではない。(全2回の2回目/前編を読む

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――山岸さんは山の中でヒグマを追うのは、「米軍の特殊部隊を相手にするようなもの」と表現されました。具体的にどういうところが?

「森の中でこっちはヒグマの存在に気付いてなくとも、向こうはほぼ確実にこちらに気付いています。以前、知り合いのハンターが大雪山に犬を連れて猟に行ったとき、草原の中に5頭のクマがいるのが見えたそうです。するとある瞬間、そのクマたちが一斉に立ち上がって、同じ方向を向いて鼻をひくひくさせ始めた。後でわかったのは、その方向から5キロメートル以上離れたところにトウキビ(トウモロコシ)の花があって、ちょうどその花が開いた瞬間だったそうです」