「生徒会行く人がセッターやれるわけないだろう」

高度成長期に「10万人コーラス運動」が、1974(昭和49)年には伝説の野外ロックフェス「ワンステップフェスティバル」が開催された街、郡山は、2008(平成20)年に「音楽都市」を宣言している。

日大東北高3年生の渡辺敦之さん、将来何屋になりたいですか。

「中学校の教員になりたいと思ってます。いま、理系で物理を選択しているので、理科の教員になりたいと思って。物理を選んだときには、まだそんなに将来のこと、考えてたわけじゃなかったんですけど。もともと計算とかが好きで、暗記教科があまり好きじゃなくて。歴史とかは、覚えちゃえば好きですけど、覚えるまでの過程があまり好きじゃないんです」

中学校の教員になりたいと思ったきっかけは。

「父が教員をやっているってことと、中学校の担任の先生です。俺、中学校のころにバレーボール部の部長と生徒会長掛け持ちしてて。1年のときにはセッターだったんですけど、生徒会始めてから、『生徒会行く人がセッターやれるわけないだろう』って言われて。セッターは真ん中で球上げる人なんで、常にいないといけない。生徒会に行かれたら、だれが上げるんだと。そのことで、いろいろ悩みがあって、それを解決してくれたのが担任の先生で。すごい相談に乗ってくれて」

中学校の教員になりたいと思ったのは、いつごろですか。

「中学校のころはまだ漠然としてて、『大学へ行って研究職とかもできたらいいな』とか、いろいろ興味を持っていたんですけど、高校に入って、いざ大学を考えたときに、なりたいなと思ったのが教員でした」

インタビューは2012年の10月末に行われている。渡辺さん、行く大学は決まりましたか。

「まだ決まっていないです。一般試験で受験します。いま行きたいと思ってるのが教育科なんです。理科の先生になるための教育学部に入ろうかと」

ここで渡辺さんからは具体的な大学名を聞いたのだが「かなり背伸びしての受験なんです。(学校名を記事に)書かれたら嫌なんです」との意向を聞き、学校名は書かない。いずれにせよ、渡辺さんはこの1月19〜20日に行われるセンター試験(正式名称「大学入試センター試験」)を受ける予定だ。国公立志望とのことなので、そのあと各大学の試験(主要国公立大学であれば、2月25〜26日に前期試験が行われる)を受けることになる。

高校生たちの親の年代は、大学共通第一次学力試験(通称「共通一次」1979〜1989年)とセンター試験(1990年〜)の移行期が学生時代だ。共通一次世代には、現行のセンター試験制度は少々複雑なので、念のため以下を記しておく。まず、国公立大のほとんどは「センター試験で本学が指定した教科・科目を受験した者」を出願資格者としている。そのうえで、センター試験の使い方が「単独判定」「二次試験の結果を合計」「一部科目を採用+各教科点数を任意の割合で圧縮+二次試験の結果を合計」「第一段階選抜にだけ使い、最終的な合否の判定は二次試験の結果で」など、大学によって異なる。共通一次の時代と大きく異なる点は、多くの私立大学もセンター試験に参加していることだ。2012(平成24)年度は、日本の全私立大597校の86%、513大学が参加している。

結果、現在の高校生の「受験戦略」は、共通一次の時代よりも、行こうとする大学によって細かく異なってくることになる。加えて、親の世代は聞いたこともないような学部・学科名が乱立し、その先には、親の世代が体感していない就職難が待つ。そして、親たちの発想の中にはなかった「新しい職業」がある。高校生たちの話を聞いていて感じることは、今ほど「進学、就職」の親子間での意識のギャップが大きい時代はないということだ。

たとえば25年前に「NGOで働いてみたい」という高校生はいただろうか。次に登場するのは、そう語る高校2年生だ。