日本株は巨大なサイクルを2回完了

③日本に割安のバリュー株がたくさんある

3つ目の理由は、日本に割安のバリュー株がたくさんあることだ。グローバル投資家は、かなり割高になっている米株以外の投資先を探している。

とくにバリュー投資家にとって、日本ほどよい市場はほかに見当たらない。米国の著名投資家であるウォーレン・バフェットが日本株に投資し始めて以来、ほかのバリュー志向のグローバル投資家も、日本株に注目するようになった。なぜなら今の米国株は、グロース株が中心になっていて、バリュー株は見向きもされないからだ。

ところが、日本では真逆の現象が起きていて、MSCIジャパンのバリュー株指数とグロース株指数の動きを見ると、2023年以降、バリュー株がグロース株を大きくアウトパフォームしていることがわかる。

つまり、日本株の上昇は、半導体セクターやAIバブルと、あまり大きな関係がないということになる。

④地政学的理由

4つ目の理由が地政学だ。個人的にはこれが最も重要な理由ではないかと考えている。なぜなら、その影響が今後40年にわたって続くと思われるからだ。

本書で見てきたように、米中新冷戦の開始で、グローバル資本は中国から撤退し、新たな行き場を探し始めた。そこで、最も安全かつ割安で、優秀な人的資源が豊富な日本が選ばれようとしている。

アメリカと中国の国旗
写真=iStock.com/MicroStockHub
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日本株が上昇し始めたのは2013年のことだ。その理由として、超金融緩和政策を打ち出したアベノミクスを挙げる声は多いが、実はその年は「新冷戦」の開始年でもある。これは、恐らく偶然ではない。

日本株は40年間の上昇と、23年間の調整という巨大なサイクルを2回完了した。新しい上昇サイクルは、2013年に始まって2053年まで続き、2053年から2076年まで調整すると考えられる。まさに今は、上昇サイクルの真っ最中なのだ。

こうした4つの観点からも、今の日本株が割高であるとは私には思えない。