なぜ『古畑任三郎』は愛されつづけるのか? 田村正和の“プライベートの謎”と「今では考えられない」“挑戦”が生んだもの(明日菜子)
1994年4月、のちに国民的ドラマとなる『古畑任三郎』(フジテレビ系)はこんなセリフで幕を開けた。
〈「犬を飼っている人に一言。名前を呼ぶ時は“ちゃん”を付けるのは止めてください。“ちゃん”を付けると、犬は“ちゃん”までが自分の名前だと思い込んで“ちゃん”を付けないと振り向かない場合があります。犬には……」〉
渋い響きの名前ゆえに時代劇と間違われやしないかという懸念から、第1シリーズのみタイトルを『警部補 古畑任三郎』としたそうだが、今やこの名前を聞くと、ほとんどの人がブラックスーツに身を包み、ニヤリと笑う田村正和の姿を思い浮かべるだろう。
『古畑任三郎』シリーズが地上波で一挙放送
第1話「死者からの伝言」犯人役ゲストは中森明菜。弄ばれていた編集者の恋人を殺してしまう憂いに満ちた少女漫画家・小石川ちなみを演じた。豪華すぎる歴代の犯人役の中でも、これ以上ふさわしい幕開けはない。彼女の悲劇をリアルタイムで目撃していた当時の人はどれだけ興奮しただろうかと、『古畑』の中でも“傑作”と名高い第1話を見返すたびに思いを馳せる。
あれから30年、『古畑任三郎』シリーズが地上波で一挙放送されており、またまたお茶の間を夢中にさせているのだ。
『古畑』は連続ドラマ3シリーズとスペシャルドラマ計10本、エピソード数に換算すると全43話。約14年間にわたって展開されたテレビドラマシリーズとしては、かなり少ない話数だ。
例えば、2000年から始まった『相棒』(テレビ朝日系)は、2023年には放送400回を超えた。今年で12周年を迎える『ドクターX~外科医・大門未知子~』(テレビ朝日系)は、第7シリーズまで展開されている。