コツは「自問」
相手と会話しているかのように頭の中で想像するコツは「自問」です。「本当にこれで伝わるだろうか?」と、疑問を持つこと。
なぜなら、頭の中に「?」が浮かぶと解消したくなるからです。
私たちは、小さい頃からなぞなぞが好きだったり、大人になってもクイズ番組が好きだったりします。
「?」と出題されると、好奇心をかきたてられて思わず答えたくなるのです。
ミステリー小説なんかはずっと「?」「?」「?」が続くので、謎を解明しないと気がすまなくなり、最後まで読んでしまいます。
アメリカの心理学者・臨床心理士のロバート・マウラー氏は、その著書、『脳が教える! 1つの習慣』(講談社)の中で、「あなたの脳をプログラムするもっとも強力な手段のひとつが、『小さな質問をする』というテクニックだ」「質問は脳を目覚めさせ、喜ばせる。脳は、たとえばかばかしい質問だろうと奇妙な質問だろうと、質問を受け入れ、じっくり考えるのが好きなのだ」と結論づけています。
問うことが想像力を刺激する、ということですね。
自問自答が地頭を鍛える
仮に、暴飲暴食が癖になっている人は、「これを食べたらどうなる?」と自問することができれば、そこに考える時間が生まれます。そうこうしているうちに血糖値が正常に戻って、食べたい気持ちがなくなるかもしれません。
資料を提出するときに、「このまま資料を提出したらどうなる?」と考えることができれば、ミスをして指摘されることも減るでしょう。
「いま、この一言を口にしたらどうなる?」と自ら問える人は、相手との摩擦を避け、その言葉を鞘に納めておくこともできるでしょう。
自ら問うからこそ、話すことも、あえて話さないこともできるのです。
そう考えると、ソクラテスが「権力とは何か?」「なぜそう思うのか?」と弟子に問うていたことも、お釈迦様がむやみやたらに説法をしなかったのも、よくわかります。
まさに自分に問うて、自分で答える。自問自答が地頭を鍛えてくれるのです。
自分に問いかけた分だけ、脳内のシナプスがつながり、考える力が強化されます。
疑問が相手との関係を強靱にする架け橋になるのです。
1978年生まれ。新潟県出身。2017年、「伝わる話し方」を教育する株式会社モチベーション&コミュニケーションを設立。日本能力開発推進協会メンタル心理カウンセラー、日本能力開発推進協会上級心理カウンセラー、一般社団法人日本声診断協会音声心理士。著書に『10秒でズバッと伝わる話し方』(扶桑社)、『雑談の一流、二流、三流』、『質問の一流、二流、三流』(ともに明日香出版社)がある。