では、冒頭のお笑いタレントの場合はどうか。
仕送り分は、支給額から減らされていた。そして、福祉事務所との協議の結果、収入が増えたので扶養を増額していたという。法的にも、社会的にも、まったく問題がないケースだ。もちろん不正受給ではない。
扶養義務への誤解は貧困問題を深刻化させている。疎遠になった親族への意地や、自らが置かれた状況を知られてしまうのを嫌がり、生活保護の申請を拒否してホームレス生活を送る人も少なくない。それは自死や餓死に繋がる危険性を孕んでいる。
親や親族に対する私的な扶養の負担を軽くして、生活保護などの公的扶助のセーフティネットを強化していくのが、世界的な潮流だ。
イギリス、フランス、スウェーデンなどでは、扶養義務を負うのは配偶者と未成熟な子どもに対してだけ。親や兄弟姉妹に対しての義務は一切ない。諸外国では、低所得者が公的扶養を受けることは当然の権利で、受給のハードルも低い。
親を援助した結果、自立していた子どもも貧困世帯となる恐れがある。生活保護を「恥」と思う必要はない。生存権を保障した憲法25条に基づいた国民の権利だ。それでも不正受給が不安なときは首都圏や近畿圏などにある「生活保護支援法律家ネットワーク」に相談してほしい。
(構成=山川 徹 撮影=坂本道浩)