大手飲食企業「ワタミ」も参入したが…

消費者行動のほかにも、参入者が増えて飽和状態になったこともブーム終焉の一因だという。なかでも、「大手飲食企業の参入は完全に悪手だった」と永田氏は指摘する。

「ワタミは『から揚げの天才』というお店でから揚げ専門店市場に乗り込みましたが、中小事業主の主戦場に大手が参入しても、ほとんど勝ち目がないのです」

そもそも、飲食業界は約8割が個人ならびに中小事業主だ。「個人で経営する場合は人件費が浮く」(永田氏)という大手にはない戦い方ができる。

「一方大手は、資本力はあるかもしれませんが、現場に配置する社員やアルバイトの人件費、本部の管理コストなどなどを考えると、どんなに小さなテイクアウト店でも損益分岐点(※事業において売上と費用がまったく同じ金額になるポイント)が高くなってしまいます。大手が中小事業主が参入しやすい業態に乗り込んで成功するのは、なかなか難しい。

一方でワタミは同時期に大型居酒屋を焼肉店へ業態転換させましたが、これぞ大手の仕事といえるでしょう。焼肉のダクトやロースターなどへの大がかりな設備投資は中小事業主には難しいからです」

大手やその他個人事業主が大勢ブームに合わせて参入したことで、から揚げ専門店の市場はあっという間に飽和状態になった。さらに、消費者が「わざわざ、専門店じゃなくていいのでは?」と思い始めたことでブームが去っていったのだ。

「から揚げ専門店ブームの終焉については、コロナや物価高など色々な分析がありますが、それはあくまで理由の一部にすぎないと思います。これまでお話したことは、時代に左右されない、飲食業界のセオリーとも言えるからです」

ブーム終焉後も生き残るには…

では、ブームが去ったあとも生き残るためにはどうすればいいのか? 永田氏によれば、専門店での出店を考える場合は、二の矢三の矢を用意することが定石だという。

「ブームが去ることを予想して、他社に先んじて専門性を広げていく仕掛けが必要です。から揚げと関連性があるものだと、やはり揚げ物ですね。から揚げ以外にコロッケやカツなどの揚げ物にウィングを広げることを最初から念頭に置くなどでしょうか。あらかじめ焼き鳥を焼けるような設備を入れておくというのも手だと思います」