――給与形態もそれまでとは全然違うと。

足立 それまでのギャラは、僕が上京してからずっと使っている口座に振り込まれていて。そこから妻の口座に全額移動って感じだったんですけど、いまは会社の口座に入れてもらってます。

でも、妻のカードを持たせてもらっているので、自由にはおろせるんです。ただ、いくらおろしていくら使ってるかが筒抜けだから、ちょっと使い込みの度が過ぎると怒り狂われる。いまは会社名義のカードを持たせてもらってないんですよね。だから、ギャラが入ってもどうなってるのかわからない。

――それだけお金にしっかりした社長ってことですよね。

足立 そうでもないですよ。安愚楽牧場ってあったじゃないですか。和牛のオーナーを募ってお金を集めて経営破綻した事件。2011年かな。それに引っ掛かってますから、うちの社長。

――大損を。

足立 長女が生まれて出産祝いとかもらったのもあって、「30万ぐらい突っ込んでいい?」と聞かれたんです。当時、僕はまったく仕事がなかったのでなにか言える立場じゃないので「いいんじゃない」と答えたら大事になって。

それでも「まぁ、30万ぐらいならいいか」と構えてたら、妻は秘密裏にそのときの我が家の全財産100万を突っ込んでいてパーですよ。すげぇギャンブラーだなって尊敬しましたけど。このド貧乏状態でぜんぶ突っ込むかと。結局は「あんたの稼ぎがゼロ過ぎて私がこういう発想になってしまう」と僕のせいにされましたけど(笑)。

――出産直後の家計にとってかなり痛い出費ですね。

足立 そうですね。でも、その頃の僕は完全にヒモだったので。「ここで文句言わずに黙っておけば、後々なんかあっても勘弁してもらえるだろう」って打算が働いて、「しょうがないよ。人生こういうこともあるよ」って聞き分けのいいオヤジぶりました。

1週間分ずつ振り込まれる『ブギウギ』のギャラ

――ちなみに『ブギウギ』のギャラは、すべて書き終えてからの支払いになるのですか。

足立 1か月に一度、1週分ずつ振り込まれてきます。全額いっぺんにじゃないんだと。

――なんか、面白いですね。

足立 俺も、これはちょっと意外でした。

――執筆期間が長いので、ほかの仕事を受けにくい状況になるからでしょうか。

足立 朝ドラって、ほぼ2年やるので。もし終わってからギャラが振り込まれるようだった場合、終わるまで待ってたら大変なことになってしまいますよ、うちの場合は。

――1週分ずつの振り込みだとお金の心配はないですけど、それだと喜びが少ないような気も。

足立 どうなんだろう……なんとも言えないですね。最初のうちは「まとめてドカンとくれたほうが、一気に金持ちになった気がするのにな」みたいに思ったこともありましたけど、最後にまとめてもらっても、それまでの期間は何も入ってこないわけでね。

100円ショップのバイト経験で『百円の恋』を執筆

――事務所設立を発表したポストでは「30代40代と様々な職場でアルバイトしてその都度、そのタスクじゃ社員にはなれないなあと言われ続けました」とも書いています。『百円の恋』公開時もまだバイトを?

足立 『百円の恋』が公開されたのが2014年の暮れだから、42歳か。その頃も、まだバイトしてましたね。妻は勤め人で、僕は近所のスーパーで早朝の品出しを。バイトは20代後半から、ずっとやってましたよ。

――バイトの遍歴を教えてください。

足立 珍しいバイトはしてないですけどね。それこそ100円ショップの経験で『百円の恋』を書きましたし。ラーメン屋というか中華屋というか、そこは結構長かったな。とりあえず飲食店が多かったですかね。ただ、飲食店ってやっぱり若い子が多いので、30代後半ぐらいからは「なんかいづらいな」と感じて。