仕事の視野を広げるには読書が一番だ。書籍のハイライトを3000字で紹介するサービス「SERENDIP」から、プレジデントオンライン向けの特選記事を紹介しよう。今回取り上げるのは山極寿一、鈴木俊貴著『動物たちは何をしゃべっているのか?』(集英社)――。
木の枝にとまるニホンシジュウカラ
(写真提供=鈴木俊貴)

イントロダクション

ペットと暮らしていると、動物でも人間の言葉を理解しているのでは、と感じられることがよくあるという。

近年の動物の認知やコミュニケーションに関する研究によると、動物たちは互いに、われわれが想像するよりも複雑なメッセージをやりとりしているという。動物はどんな言葉を使っているのだろうか。

本書では、野鳥のシジュウカラの言葉を解明した気鋭の研究者である鈴木俊貴氏と、ゴリラの研究で知られる著名な霊長類学者にして京大前総長の山極寿一氏が、動物のコミュニケーション、ヒトの言葉の起源などについて、最新の知見を紹介しながら語り合っている。

鈴木氏は、終日森に籠り、シジュウカラと同じ環境に身を置くことで、シジュウカラが何を考え、どのように世界を見ているのか、想像できるようになったという。そして実験により鳥類でありながらその言葉に「文法」があることを発見した。

著者の山極寿一氏は現在、総合地球環境学研究所所長を務める。鈴木俊貴氏は東京大学先端科学技術研究センター准教授。2022年8月、国際学会で「動物言語学」の創設を提唱した。

1.おしゃべりな動物たち
2.動物たちの心
3.言葉から見える、ヒトという動物
4.暴走する言葉、置いてきぼりの身体

シジュウカラは「タカが来たぞ!」とウソをつく

【鈴木】僕みたいに一年の半分以上、朝から晩まで森に籠る生活をしていると、毎日のように新しい発見があるんですが、たとえば、シジュウカラに高度な意図みたいなものを感じることもよくあります。

【山極】たとえば?

【鈴木】大きな鳥とのエサをめぐる競争だとシジュウカラが不利になる。そんなとき、シジュウカラはウソをつくんです。「タカが来たぞ!」といって注意を促す鳴き声を出すんですね。すると他の鳥はびっくりして逃げますから、シジュウカラはそのスキにエサを手に入れるんです。