火災旋風では局所的に発生した火災が、周辺から空気を取り込むことで、急激な上昇気流が発生する。これが次々と増幅されて火炎を伴った『燃える竜巻』になるのだ。200メートル以上というと東京・新宿にある都庁舎に匹敵する高さだが、火柱のように炎が渦を巻いて高く立ち上ると、事実上消火活動は不可能となってしまう」

約3800万人がひしめきあって暮らす首都圏では、火災の被害も増大する。犠牲者の9割が火災によるものだった関東大震災からも、その被害の大きさが予測できる。当時に比べ防火対策が進んだ住宅は増えているものの、「木造住宅密集地域は関東大震災当時と比べて減ったとはいえ、首都圏にはまだたくさん存在する」(鎌田氏)という。

タワマンで気をつけたい地震のタイプとは?

一方で首都圏を襲う地震には、関東大震災当時にはなかった新たな不安要素もある。ここ10年で建設がますます加速し、東京の景色を一変させた超高層ビルやタワーマンションである。

1983年の時点では59棟だったタワーマンションや高層ビルは、2021年には1008棟まで増加。今年6月に竣工した「麻布台ヒルズ」(高さ約330m)が日本一高いビルとなったことも記憶に新しい。タワーマンションや高層ビルが地震によって、大きな被害が出ることはあるのだろうか。

この問題について、鎌田氏は、高層ビルやタワーマンションの倒壊リスクは非常に低いと指摘。むしろ設備が整っているタワマンの場合、普通のマンションよりリスクが低い面もあるという。ただ、その一方で、弱点を明らかにする。

「一昨年10月7日に首都圏で最大震度5強を記録した地震は、東京国際空港と千葉県浦安市で『長周期地震動』を観測した。これは大きな地震で高層ビルがゆっくりと大きく揺れ続ける現象で、室内の棚にある食器や本棚の本が落ちるほか、高層階では物につかまらないと歩けないという事態となった」

ここでいう「周期」とは、揺れが一往復するのにかかる時間のことであり、この周期の長短が、建物の揺れに大きく関係してくるという。

「低い建物はガタガタといった『短周期』で揺れやすく、高い建物はゆっくりとした『長周期』で揺れやすい。これは建物が地震の揺れと『共振』することによって生じる現象で、共振した建物はブランコのように大きく揺れ出し、ひどい場合には倒壊に至る」

ゆっくりとした「長周期」の揺れが到達した場合、制震や免震装置の備わった高層ビルにおいても、予想外の揺れによる被害が発生する可能性があるのだ。

ほかにも、震度分布や火災想定図からわかる危険区域など、想定される被害についての図版とともに分析した「関東大震災100年のリアルなシナリオ 首都直下地震とタワマン」全文は、「文藝春秋 電子版」にて9月1日に先行公開、9月8日発売の月刊「文藝春秋」10月号に16ページにわたって掲載される。

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