三度目の正直か、二度あることは三度あるか

他にも電子書籍元年と言えそうな時期はあっただろうが、大きく見ると今回は三度目の正直といったところにあたる。当然、二度あることは三度あるということになるかもしれない。大事なのは、その成否をわけるポイントの見極めであろう。

3度目となった今回の電子書籍元年は、2010年のiPad登場を前後してということになる。アマゾンもkindleを発売し、俄然日本でも電子書籍に注目があつまることになった。かつてと少し状況が違うとすれば、海外ではずいぶんと市場が大きくなりつつあるという事だろう。当然、日本でも、という気持ちが高まる。

さっそく新たにコンソーシウムが作られている。講談社や新潮社など、大手出版社を含む20社による「出版デジタル機構」である(2011/09/16 毎日新聞、26頁)。記事には国際競争力を強化するとあり、そのまま読む限りは大変頼もしい。実際に2012年4月2日に発足し、公的機関も加わり、賛同出版社は280社に達しているという(2012/03/30 産経新聞、3頁)。その後の資料を見ていると、著作権を含む権利関係の管理業務を担おうとしているようにもみえる(2011/11/16 日経産業新聞 5頁)。

→出版デジタル機構
http://www.pubridge.jp/

今度こそ、ともいえそうだが、嫌な予感も既に広がりつつある。現状、kindleはまだ国内で販売されておらず、Koboもネット上での評価を見るとこれからという印象を受ける。iPadについては、普及はしているが電子書籍端末としての利用はまだまだのはずだ。というよりも、今までの見立てから言うと、インターネットをうまく制限しないと電子書籍はブツとしての意味をなせない以上、iPadは少し方向性が異なる。

確かに、辞書のような存在は、ずいぶんとネットに代替されてしまった。それは、辞書がもともと情報という要素の集合という色合いが強い本だったからである。そのほか、ネット上でも比較的うまくいっているようにみえるのは新聞や雑誌である。こちらは、情報を固めるというよりは、フローで常時流れていくことをよしとしており、ネットと親和性があるようだ。逆に言うと、これらの新聞や雑誌でも、固められて電子書店で売られているような場合には、それほど売れていないのではないかと思う。