炎症を繰り返すうちに、関節を修復する「滑膜かつまく」が過剰に反応して腫れ始めます。関節の痛みが長く続くと、あまり動かさず安静にしたくなりますが、安静にしていると靭帯が硬直したり、筋肉の伸びが悪くなったりして、かえって痛みが悪化してしまいます。こうして、慢性的に「関節痛」に悩まされるようになるわけです。

関節痛は、初期の頃には痛みが緩和することがありますが、完治していない場合、いずれさらに強い痛みが起きます。

たとえば、皆さんが関節に痛みを感じたとしましょう。数日で回復して、その後再発もない場合は、たいてい滑膜などの一時的な炎症が原因です。一方で、痛みが長く続いたり再発したりするようであれば、炎症が続いている可能性が高いです。MRIやレントゲンなどの精密検査で原因を特定する必要があります。早期発見・早期治療できれば、再生医療を用いることによって完治の可能性が高くなりますから、違和感があったら早めに病院に行ってください。

関節痛と似た痛みが生じる「腱鞘けんしょう炎」は、その名前のとおり、筋肉の動きを伝達する腱に炎症が起きています。靭帯と関節は近い位置にあるため、区別が難しい場合もあります。ただし、別の病名で呼ばれてはいますが、腱鞘炎と関節痛の治療法は大きくは変わりません。

膝の腱の周辺に炎症が起こり、腱鞘炎と呼べるような症状が見られたとしても、関節痛と診断することもあります。関節周辺には多くの組織が密集しているので、全体を指して関節痛と診断することが多いのです。

ヒアルロン酸注射では効果が短時間のみ

人間には、「ホメオスタシス(生体恒常性)」という、体の状態を一定に保つメカニズムがあります。標準的な関節痛治療では、痛み止めや湿布で痛みを和らげているうちに、「ホメオスタシス」によって組織を修復します。痛みを抑え、リハビリテーションで患部に適度な動きを加えることで、筋肉などの組織が正常な状態に戻ろうとする働きを促進します。

リハビリには「物理療法」と「運動療法(運動器リハビリテーション)」があります。「物理療法」は超音波や電気の刺激で痛みを緩和するもので、「運動器リハビリテーション」はトレーニングでの体づくりを指します。

十分な筋力と柔軟性があれば、関節痛にはなりにくくなります。しかし、筋力がある方は柔軟性が足りず、逆に柔軟性がある方は筋力が足りない傾向にあります。だからこそ、理学療法士とのリハビリを通して、バランスのとれたケガをしにくい体づくりを行う必要があります。

患部への「ヒアルロン酸注射」も関節痛治療のひとつです。関節と関節の間にある関節液にはもともとヒアルロン酸が含まれており、ヒアルロン酸を注射することで関節の動きをなめらかにしたり、痛みを抑えたりする効果が期待できます。しかし、関節痛の進行度合いによっては、効果が短時間で失われることも珍しくありません。

メリットもデメリットもある、従来の関節痛治療法