上司と取得希望者の間に大きなギャップ

チームワーク総研では、男性の育休取得期間について、上司と取得希望者本人それぞれが考える「理想と現実」を調査しました。その結果、上司が許容範囲とする期間は理想も現実も「1週間未満」という回答がトップだったのに対し、取得希望者本人の理想は「半年〜1年未満」、現実的に取れそうなのは「1週間未満」がトップでした。

「この結果から、取得希望者はもっと長く取りたいと思いながらも、現実的には上司や職場の雰囲気に合わせざるを得ないと考えている様子がうかがえます。本人の中にこうしたモヤモヤがたまると、よその会社へ行ってしまう可能性も。会社側としては彼らのモヤモヤを受け止めるような施策が必要です」

目指すべきは、半年取りたい人も1週間取りたい人も、それぞれが希望通りの期間を取れる環境。和田さんは「一つひとつ形の違う石で石垣を作るように、一人ひとりの個性を生かした組織づくりが理想」と語ります。そして、理想形に向けて組織を変えていくためのポイントとして、次の3つを挙げました。

組織を変えるために大事なこと
風土:一人ひとりの行動や意識を変えることで変化が生まれる。これにはトップメッセージが効果大。

制度:トップメッセージを現場に生かせるよう、例えば在宅勤務や人事評価などのルールを定める。これにより人の行動が変わる。

ツール:情報共有クラウドやビデオ会議などの導入。コミュニケーションが効率的にできるようになる。

最終的に目指すのは①の風土変革で、②と③はその具体策。ただ、制度変更やツール導入は比較的すぐ実現できるものの、風土を変えるには時間がかかります。有効なのは、トップの「率先垂範」、部署を超えて成功事例をシェアする「ロールモデルの横展開」、現場の声を届ける「ボトムアップ」の3つ。和田さんは、これらを同時に続けていくことが大事だといいます。

「ボトムアップのアプローチとしては、個々に声を上げさせるよりも分科会のようなチームをつくってあげたほうがいい。意見や要望を効果的に上層部や他の社員に伝える手段として有効です。

たとえば、育休を半年取りたいという要望がある場合、関連する社員や関係部署の代表者などからなるチームを結成し、この要望について意見を集約します。その後、上層部や他の社員に向けて、議論の経緯やチームから出た意見を伝えることで、個々の声や思いを後押しし、意思決定プロセスに反映させることができます。」

では、サイボウズではどう風土改革を進めてきたのでしょうか。以前は長時間労働が当たり前という風土だったそうですが、2010年以降、青野慶久社長が3回にわたって育休をとったことで、会社全体が徐々に変わり始めました。

青野社長は、1回目は2週間の育休、2回目は半年間毎週水曜日を育休日に、3回目は半年間毎日16時退社と、それぞれ形を変えながら育休を実践。ただ、1・2回目はメディアからは注目されたものの、社内に浸透するには至らなかったそうです。

「人事・ダイバーシティの会」第6回研究会の様子
撮影=小林久井(近藤スタジオ)
「人事・ダイバーシティの会」第6回研究会の様子
撮影=小林久井(近藤スタジオ)