世代・トレンド評論家、インフィニティ代表取締役 牛窪 恵(うしくぼ・めぐみ)
『プレジデント ウーマン』編集長 木下明子(きのした・あきこ)
今の20代はキャリアへの納得度が低い
今回の研究会は、世代・トレンド評論家の牛窪恵さんによる「今の20代の傾向と、彼らを上手に戦力化するコツ」と題した講演から始まりました。日本の多くの企業にとっては、ダイバーシティの推進はもちろん若手社員の育成も大きな課題のひとつ。各企業から多くの人事・ダイバーシティ担当者が参加し、講演に耳を傾けました。
マーケティング会社インフィニティの代表取締役で、おもにネット調査やビッグデータなどを用いる「定量調査」と、少人数を対象にグループインタビューなどを行う「定性調査」を、企業各社と数多く実施してきた牛窪さん。各世代の特徴や消費傾向、彼らを取り巻く社会環境などを長く調査研究しています。
自身はバブル世代で、20代の頃はバリバリ働くことが格好いいとされる時代だったそう。ところが今の30代半ば~後半は「草食系世代」。牛窪さんが名付けた世代名で、多くがポジションや年収に固執せず、ワークライフバランスを重視する傾向が強い人たちです。
「そして、さらにその下のゆとり世代やZ世代は、消費傾向も働き方に対する考え方も、従来の世代とは大きく違います。なぜそう変わってきたのか、彼らにどう向き合えばいいのか。今日の講演が皆さんのヒントになれば幸いです」
牛窪さんはまず、さまざまな調査結果をわかりやすい図にして掲示しました。今の50代の約6割が「20代の頃は残業も顧みず働けるだけ働いていた」のに比べ、今の20代は「仕事よりプライベートを優先する」が圧倒的多数(約8割)(※1)。ここからは大きな世代間ギャップが見てとれます。
また、今の20代は現在のキャリアへの納得度が総じて低く、スキルを磨くのも「スキルがないと転職できないから」と転職が前提になっている様子。また「(どちらかといえば)副業したい」という人の割合も60%以上に上っており(※2)、牛窪さんは「この世代は震災やコロナ禍といった想定外の危機をたびたび経験していることから、本業と副業の二刀流で万が一に備えようという意識が高い」と分析しました。
さらに、職場で人間関係に難しさを感じている20代は85%。難しさの対象を「先輩や同僚」とする人が多く、理由としては威圧的、気分に浮き沈みがある、指示に一貫性がない、人柄が信頼できないなどが挙がりました(※3)。他の世代でもこうしたことに悩む人は少なくありませんが、今の20代はそれにも増して人間関係に敏感で、職場の雰囲気をとても気にするそうです。
※1:2019年 エニワン「『昭和世代と平成世代の価値観』に関するアンケート調査」
※2:2020年 学情「20代副業に関する意識調査」
※3:2018年 エン・ジャパン「1万人に聞く「職場の人間関係」意識調査―『エン転職』ユーザーアンケート」