なんでも否定してくる上司とはどう付き合えばよいのか。人材育成コンサルタントとして、ハラスメント行為者へのカウンセリングを専門に行う松崎久純さんは「否定されても、できるだけ意識的に、個人的なこととして受け止めないようにしてみましょう。受け流す方法としては、効果があります」という――。

なんでも否定する上司から解放されたい

毎日顔を合わせる上司が、ネガティブな人で嫌になっています。私に標的を絞って攻撃しているようには思いませんが、この人の性格なのでしょう。大勢の人から嫌われています。

部下としては、何かにつけて、言うことを否定されるので、仕事に熱心に取り組む気が失せてしまい、最近では、この上司から解放されたい思いで頭がいっぱいです。誰かが「いいかげんにしろ」と一喝してくれるといいのですが――会社員(20代後半)の方からのご相談です。

不安と否定的な感情のイメージ
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常に人と反対のことを言う上司

私もネガティブな人なら任せてくださいと言えるほど、数多くの否定的な人と接してきましたが、否定的といえば、真っ先に思い出す人がいます。

勤務先の海外事業部で管理職だった(当時)50代の人です。

為替レートが自社に有利なときを見計らって外貨送金をすると、「レートは次の日にどう変わるかわからないから、考えても意味がない」。大掃除で蛍光灯を拭いていると、「器具全体をきれいにしなきゃダメだろ」という具合に、何でも否定してきます。

海外の出張先で時間が空いたときには、この人に「○○という観光名所がすぐ近くですから、見に行きませんか」と声をかけて、「そんなもの見てどうするの?」と言われ、絶句したことがあります。

場所はジャカルタだったのですが、人気のあるモニュメントを観に行くのが危ないという意味なのか、「君子危うきに近寄らず」と言っていたのを覚えています。

この人は「常に人と反対のことを言っているだけ」なのですが、どうやらそのことに気づいていないのです。

「この代理店向けの今年度の売り上げ目標は、達成が難しそうです」と話すと、「担当者は目標を達成できるように、諦めずに代理店を説得すべき。最後まで、できないと述べてはいけない」と言ったかと思えば、しばらくして、「無理とわかることにこだわっていてはダメ。できないとわかれば、早めに相談して、他の方法を検討すべき」と話すのです。

このように支離滅裂なことも多いため、私は思わず口を滑らせ、「さっきは、それがダメだと言ったじゃないですか」と反応してしまったこともあります。

否定的なことを言い、相手を非難することで、賢いことを述べた気になっているのですが、この人は驚くべきことに、会社で一緒に働く人たちにだけでなく、顧客などの取引先に対しても同じことをするので、社外の人たちからも煙たがられていました。

激しく嫌っている人たちもいる中で、私は周囲から「よく話を聞いていられるなぁ」と言われるほど穏やかに見えていたようですが、まともに相手をしていては、参ってしまいそうなことも多々ありました。

相談者の方も、同じような状況にいらっしゃるのかもしれません。