一方、同じ善玉菌のエサとなる水溶性食物繊維は、胃酸で消化されることなく大腸まで届きます。ヨーグルトの乳酸菌のように、人を選ぶこともありません。さらに、水溶性食物繊維は、さまざまな種類がいる善玉菌たちすべてのエサになるので、とても効率がよいのです。

ですから、腸活として気軽に食に取り入れるものとしては、水溶性食物繊維がイチオシなのです。水溶性食物繊維の多いのが、ネバネバしている食べ物です。大和芋、長芋、オクラ、とろろ昆布などで多く摂れます。納豆も効果絶大です。野菜ではごぼう、アボカド、にんじん、きゃべつ、セロリなど。果物ではりんご、プルーン、いちじく、いちごに豊富に含まれています。

便を排出しなければ腸内環境はよくならない

とはいうものの、実は私は「食」だけでは不十分だと考えています。日本人の腸内環境が改善しないのは、ある大事な要素が、日本人の腸活からすっぽり抜け落ちているからなのです。

それは何かというと、「ぜん動運動」です。腸のぜん動運動を促すことにフォーカスしなければ、腸内環境の改善はできないと言っても過言ではありません。

ぜん動運動は、入って来た食べ物を分解・消化し、吸収し、さらに便を作っていらないものを排出するために欠かせない動きです。

慢性便秘に悩む方は、たいてい大腸のぜん動運動が弱くなっているのです。

川本徹『結局、腸が9割』(アスコム)
川本徹『結局、腸が9割』(アスコム)

ぜん動運動が活発なら、便が大腸内に居座らず排出されます。便と一緒に悪玉菌のエサになるタンパク質のカスや、悪い脂なども排出されるので、悪玉菌が腸内で極端に増殖する心配はありません。

しかし、ぜん動運動が弱いと、せっかく善玉菌を増やすような食事をしても、それらがきちんと腸に作用しない可能性が高くなります。

食事には気をつけているのに腸の調子が改善しないという人は、善玉菌を増やすことに加えて、腸のぜん動運動の促進を意識する必要があるのです。

腸活は「ぜん動運動の促進+食事の改善」の二本柱で

腸のぜん動運動は、私たちの意思とは関係なく起こっています。「動け!」と命令をして動かすこともできませんし、腸の中に命令するものがいるわけでもありません。基本的には自律神経が、その動きのカギを握っています。

けれど、私たちが日常生活でちょっと工夫をすれば、自律神経を整えて、その結果としてぜん動運動を促進することはできます。例えば、体を左右にねじるなどの動きで、適度に物理的な刺激を与えることは、ぜん動運動の促進に有効ですし、私も来院された方にそうした体操を指導することもあります。

腸活は、「ぜん動運動の促進+食事の改善」の二本柱ではじめて本当の効力を発揮すると言えるでしょう。

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