シニア男性を幸せにするのは「親密な女性」

一人暮らしのシニア男性の場合、同性の友人よりも、親密な女性の存在が幸福度につながる。親密な女性がいない人のうち幸福なのは32%、いる場合は58.3%で、倍近い開きがある。女性の場合、異性の友人がいる・いないによる幸福度の差は、男性ほど大きくない。

NPO法人「老いの工学研究所」の2013年の調査「“充実した老い”の実現に関するアンケート」によると、幸福度が80点以上と高かった高齢男性のうち、約8割が配偶者と同居している。そして一人暮らしの場合、幸福度が高い人はわずか4%(!)しかいなかった。

ちなみに、同アンケートによると、「今の配偶者と結婚して良かった」と回答した割合は、男性が8割超、女性が6割ほどであり、ここにも非対称なギャップがある。そして高齢女性の場合は、幸福度が高いことに、結婚状況や配偶者の存在が男性ほど大きく関与していない。むしろ経済的な不安がないこと、健康面での不安が少ないことが女性たちにとっては重要である。

「働くこと」が唯一の居場所であり社会的役割

NPO法人「老いの工学研究所」理事長の川口雅裕の記事「男性高齢者の充実度・幸福度が低い理由」によれば、人生のそれぞれの時期の発達課題をうまくクリアできず、老年期に幸福を感じにくいのは、次のような男性である。

・身体的な衰えを受け入れられない(嘆く、抗う)
・“稼ぎ手”以外の役割が見いだせない
・配偶者に依存しすぎている
・趣味や地域でのつながりが持てない
・社会貢献への意欲が乏しい
・高齢期にそぐわない住まいや周辺環境である

それまでの人生の中で女性たちは、会社での仕事=賃金労働以外にも趣味や地域活動、友人関係などで様々な役割を見いだしてきた。これは、政治や正規雇用の場から排除されているために、見いださざるを得なかった、という側面もあるだろう。

畳まれたワイシャツとズボン、ネクタイ、ベルト、靴
写真=iStock.com/artursfoto
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それに対し、仕事中心の男性は、会社への帰属を失うことが、そのまま、居場所や社会的役割のすべてを喪失することにつながりがちなのである。

高齢男性の幸福度や生活満足度が、就業者/非就業者という違いによって、ここまで大きく異なるのは、先進国では日本だけだという。