©相田みつを美術館

お気に入りの美術館、というのをお持ちだろうか。

もしお持ちだったら、そこにどれくらいのペースで通っているだろうか。年に4回?

月にいちどというひとがいたら、それはかなりの美術ファンだろう。

東京有楽町・国際フォーラムの地下にある『相田みつを美術館』には、毎月でも毎週でもなく、毎日通ってくるひとがいるという。そんな頻繁に展示替えがあるわけでもないのに、毎日入場料を払って美術館に足を運ぶのは、作品を鑑賞するのが半分、あとの半分は訪れたお客さんが残した感想ノートを読みに来るんです、と相田みつをの息子で館長の相田一人さんは教えてくれた。

作品を見て、その感想を書き置いていくひとがいて、それをまた読むひとがいて、またそれに書き足すひとがいて……それは見知らぬ人間どうしの、ツイッターのようなコミュニケーションが、美術館という特定の場で日々展開しているということだ。それも電子世界上ではなく、美術館のロビーというリアルな場所で。ペンとノートという筆跡も筆圧も、感情の起伏さえも読み取れるリアルな装置によって。

いちどでも相田みつを美術館に行ったことのあるひとならば、そこが“ふつうの美術館”といかにちがっているか、すぐに体感できるはずだ。「1人になれる、2人になれる、3人になれる、あなたの人生の2時間を過ごす場所」というコンセプトから生まれたこの美術館は、ひとり静かに作品と対話したいひとも、カップルでおしゃべりしながら作品を見て歩きたいひとも、バスで押し寄せる慌ただしい団体客にも満足してもらえるような、ぜいたくな造りになっている。