昇進することのメリットをしっかり伝えて

最後のテーマは「管理職とお金」で、まず年収については男性管理職のほうがやや高い傾向が見られました。宮原さんは「同じ管理職でも、部長や次長クラスではまだ女性比率が少ないため、それが年収差となって表れているのでは」と分析。今後、上位のクラスに就く女性が増えていけば、年収差も縮まっていきそうです。

「男女リーダー1200人意識比較調査」で掲載したデータ
撮影=小林久井(近藤スタジオ)

また、1カ月で自由に使えるお金は女性管理職がもっとも多く、「15万円以上」と答えた人が約28%にのぼりました。対して、男性管理職では15万円以上は約14%。この結果に、宮原さんと木下編集長の意見は「女性は男性より購買意欲が旺盛と言われているため、女性管理職が増えれば消費が拡大し、日本経済も活性化していくはず」ということで一致しました。

「男女リーダー1200人意識比較調査」で掲載したデータ
撮影=小林久井(近藤スタジオ)

「女性管理職は金銭的に余裕があり、購買意欲も極めて高いと言えます。彼女たちを購買層とする市場は、これからさらに拡大していくでしょう。この市場を狙う企業にとっては、意思決定層に“購買層に近い視点を持った女性”がいるかどうかが重要になってきます。今後は、そうした企業こそが市場を勝ち抜いていけるのではと思います」(木下)

続いて行われた質疑応答では、参加者からたくさんの質問が寄せられました。優秀なのに「私は管理職に向いていない」と思っている女性にはどんなメッセージや施策が有効なのか、急に管理職に登用されて戸惑っている女性に会社としてどんなサポートをすべきか――。

人事・ダイバーシティ担当者の方々からのこうした質問に、宮原さんと木下編集長は一つひとつ丁寧に回答。100名以上の女性社員をマネジメントしてきた宮原さんと、多くの企業への取材経験を持つ木下編集長の助言は、大きなヒントになった様子でした。

第1部の最後には、宮原さんから参加者に向けて励ましのメッセージが送られました。

「国は当初、女性リーダーの数値目標を、2020年までに全体の3割としていました。しかし結局達成できず、2030年までのなるべく早い段階でと軌道修正しました。今度こそこの目標を達成すべく、人事部門や直属の上司の方は、女性に管理職になることのメリットをしっかり伝えて、挑戦を後押ししてあげてほしいと思います」(宮原)

宮原淳二さんと木下明子編集長
撮影=小林久井(近藤スタジオ)