老人性うつを回避するには体のケアが重要
老いを回避することはできません。“老人性”のうつ病に関しても、予防は難しいと思われていますが、高齢者に不足しがちなたんぱく質をたくさん摂取して、太陽の光によく当たる、適度な運動を毎日して、入浴の際は湯船に浸かるといった、体のケアによって予防になるというのが私の考えです。
心の病の場合、病気とそうでないものの切り分けがとても難しいものです。先述した通り、認知症であるのか、それともただの加齢であるのか、判断が付きづらいため、その病気の「疑い」は本人の自覚や、その周囲の人の印象によって左右されてしまいます。そのため、認知症だと決めつけて病院に行き、治療を受けていたが実はうつ病だった、といった悲劇が起こりうるのです。
ある程度、高齢者を専門にしている医師を選ばないと、誤診を受ける可能性もあります。自分の親がうつ病だという疑いが出たときに、どこの病院にかからせるかといった病院選びは事前にしておいたほうが賢明です。
なお、若い人にはあまり効果がないとされる抗うつ剤ですが、高齢者に関してはかなり効果があると私は考えています。セロトニンやノルアドレナリンを増やす薬を投与すると、記憶力が回復したり、寝つきが良くなったり、やる気が起きたりという効果が出る人が多いのです。
いきなり精神科に行くのはハードルが高いかもしれませんが、「やる気のなさ」や「記憶力の低下」を感じたら決して軽視せず、一度「高齢者のうつ病」を疑ってみてください。
60代以降、うつ病リスクが上がる理由
アメリカの老年医学の教科書によると、65歳を過ぎてうつ病を患う人は5%に上るといわれています。
60代以降、うつ病リスクが上がるのは、非常に納得できる話です。60代以降は若いときよりも様々な面で個人差が非常に広がってくる年代でもあるからです。
たとえば、現在77歳の吉永小百合さんのようにいつまでも若々しく美しい上、社会的にも活躍している人もいれば、寝たきりになって自由に動くことすらままならない人もいます。それが、シニア世代です。