個人の長時間労働が与える企業利益への影響は「ゼロ」
私もまた、20代から30代までの会社員時代に長時間労働で体と心が破壊された一人でした。そのため、独立して本を執筆し始めた15年ほど前からずっと、長時間労働は全力で避けること、努力はしないほどいいこと、重要なのは効率化する仕組みを考えることだと伝えてきました。
それでも、なかなかこの強固なブレインロックがなくなる気配がないので、最近では「働いたら負け」「頼まれごとは基本断ろう」と、より強いメッセージを発するようになりました。
そもそも、個人がいくら長時間働いても、企業の利益にはほとんど影響はありません。現代は、テクノロジーと資本が企業の利益を大きく作用するからです。
必要なのは「労働時間」ではなく「価値」
企業の利益が高まるのは、みんなが欲しがる価値を生んだときです。株主はそこに投資をするわけです。「従業員の労働時間が長いからこの企業に投資しよう」と考える株主はいません。
日本の労働生産性の低下を危ぶむ報道をよく目にしますが、それもまた、個人の働きや能力が足りないからではありません。1つは長時間労働の多さ、もう1つは先進国の中でも先んじて日本が高齢化社会へ突入したことが、大きな原因であると私は考えています。
2021年時点の日本の非労働力人口は4175万人です。日本の全人口は約1億2000万人ですから、日本人の3人に1人は働いていないということになります。この人口構成で労働生産性を高めるのは、非現実的であるといえます。