私が見てきた先祖代々からの大富豪についてお話しします。2歳ごろから「お金の豊かな使い方」を教えられ、子に継承します。お金は労働の対価であること、お金をなぜ使うか、お金の使用で得られる価値などを、生活の中で教えています。例えば、子どもが「おもちゃが欲しい」と言った場合、なぜ欲しいか、手に入れたらどんな気持ちになるかを確認します。「友達が持っているから」では自分が欲しい理由にはなりません。「このおもちゃがあれば友達と遊べるから」であれば、子どもなりに人間関係の育成という価値を見出していることになります。

こうして、お金で買えない心の豊かさや、手に入れることで得られる価値を考える心のベースを、幼少期から持たせます。

「人のために使いなさい」と教える

本人が一代で財を築いた家庭と、代々の大富豪では子育ての熟練度が異なります。前者は“お金持ち”の初代となりますから、継承していくための子育てはこれから実践していくことになります。一方で、代々の大富豪は先代からの学びが子に継承されており、子は次の世代へ継承する立場を理解して育つため、さらにブラッシュアップして自身の子育てに臨みます。

大富豪の子どもはお小遣いもさぞ大金だろうと思われがちですが、先祖代々の大富豪ファミリーでは、子どもの小遣いは一般的で、小学生なら月1000円程度です。使い方は本人に任せつつ、「人のために使いなさい」と教える点が共通しています。

親子で貯蓄
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なぜ「人のため」か。財産を代々受け継いでいく立場の人間は、いかなる財力や経営手腕よりも人格者であることが第一条件だと、親が痛感しているからです。例えば、子どもが後発開発途上国の子どもの学用品サポートなどにお小遣いを使うと、サポートを受けた海外の子どもとオンラインでコミュニケーションが始まるなど、お金では買えない心の豊かさや人とのつながりを得ることができます。と同時に「人のためにお金を使う」ことが気持ちいいことだと実感できます。

小学生になると、子どもに「利益の仕組み」を学ばせるために親が子に投資をします。月に1000円を渡し、1カ月後には元本を返済してもらう、というようなものです。子どもは元本の1000円をどう増やすか、頭を使うことになります。例えば、ファミリーパックのお菓子を仕入れ、小分けにして家族に売り、利益を得るなどの家庭内での商売を考えます。執事である私も、お菓子を買わされたことがあります(笑)。仕入れの際にA店とB店の価格を比較し、より利益が出る店を選ぶなどの知恵をつける経験もします。