ストレスの多い社会で、少しでも心を軽くする方法はないか。曹洞宗徳雄山建功寺住職の枡野俊明さんは、現代は「心のメタボリック症候群」のために邪念、我欲、煩悩、執着が蔓延しやすい状況にある、と指摘する。セブン-イレブン限定書籍『やめる練習』から、心がラクになる「放っておく力」を伸ばすコツを公開する──。(第1回/全3回)

※本稿は、枡野俊明『やめる練習』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

あなたの「その選択」の基準は何か

生きることは選択の連続です。仕事や人との付き合いから買い物まで、大きなことから小さなことまで、さまざまな選択をしながら人は日々生きています。

こちらを選ぶか?
あちらを選ぶか?

そのとき判断の基準になるものは何でしょうか。こちらを選ぶと得だ、あちらを選ぶと損だという損得の勘定であることもきっと多いはずです。

経済最優先の価値観が強い世の中ですから、その社会に生きる人間も、多くのことを経済的な尺度でもって判断する傾向が強くなるのでしょう。

建巧寺にて
撮影=永井浩
建巧寺にて

損得を基準にした判断は将来を保証しない

しかし、損か得かという判断は、必ずしもその通りの結果になるとは限りません。たとえば就職の際、人気がある会社に入れたとしても、その会社が10年後、20年後にどうなっているかは予想がつかないことです。

20年前、30年前であれば就活生の人気ランキングでトップの座にあった銀行にはもはや昔日の勢いはありません。本格的なAIの時代を迎え、業務形態そのものも根本から変革を迫られています。

結婚なども損得で決めることがありますが、その通りにならないことはいくらでもあります。相手がお金持ちの実業家だから結婚を決めたとしても、会社経営がうまくいかなくなり、お金持ちではなくなる可能性があったりするわけです。