次に、ヨーロッパの信用不安と、アメリカの格差問題についてお話をしたい。これはとても重要な問題です。

ウォーレン・バフェット●投資家。バークシャー・ハサウェイ社会長兼CEO。1930年、米国ネブラスカ州オマハ生まれ。慈善事業を率先し、質素な生活を送ることから敬愛の念を込めて「オマハの賢人」と呼ばれている。純資産470億ドルは、ビル・ゲイツに次いで世界第2位。

まずヨーロッパを襲っている信用不安に対して、誰が経済の舵取りなのかがわかりません。アメリカで起きた08年のリーマンショック。そのときアメリカでは、中央銀行のトップが「何でもやる」と言えば、人々は「何でもやる」能力も意思も、その発言者にあると信じることができました。自ら通貨の発行もできます。いま、ヨーロッパでは、「何でもやる」べきなのに、責任を持って「何でもやる」と言える人や組織が存在していません。これが明確にならない限り、問題は解決しないでしょう。ヨーロッパの国債利回り格差からも、人々が懐疑的に考えていると判断できます。

私はリーマンショック当時、ゴールドマンサックスとゼネラル・エレクトリック(GE)に力を貸しました。しかし、バークシャー・ハサウェイ社は、今回のヨーロッパの信用不安に際し、大きな直接投資は考えていません。なぜならば今回の危機は、その性格から私たちがたとえ50億~100億円のお金を出したところで、何も影響を与えられないと考えているからです。残念ながら、私たちはそんなに無尽蔵のお金を持ち合わせてはいません。

スペイン、イタリア、アイルランド、ギリシャもそうですが、こういった国の政府がまず信用を回復することが一番大事です。そしてその危機というものは非常に伝染しやすいので、本当にすべてがなくなってしまう危険性があると思います。現在のヨーロッパ債権を見ても投資家が弱気になっていることは明らかです。

(文中敬称略)

※すべて雑誌掲載当時

(佐藤ゆみ=インタビュー 山元雅信=取材協力 小倉和徳=撮影 PIXTA=写真)