タンガロイ新工場の竣工式の日程を精力的にこなすバフェット氏。タンガロイは偏食のバフェット氏のためにクォーターパウンダー(野菜・ピクルス抜き)とチェリー・コークを用意した。

日本について、お話ししましょう。

私は、2011年3月22日に日本に来る予定でした。タンガロイの竣工式が、当初はその日であったのです。しかし、東日本大震災が起きて、それが延期になりました。生まれてから81年かかって初めて日本に来ようとしたのに、もう一度81年間を待たねばならないのかと悲嘆にくれたものです(笑)。しかし、タンガロイは、たったの8カ月で復旧を果たしました。タンガロイ、そして日本人の見せた団結力は、世界に誇れるもので、高い敬意と賞賛の意を表します。

私だけではないと思いますが、世界中が今回の震災および原発の事故の後の日本を見て、日本というのは先に進むことをやめない国だなという気持ちを新たにしました。そして日本人とか日本の産業に対する私の見方は揺るぎないものです。

アメリカでもカトリーナという大きな災害を経験しました。ニュージーランドも地震がずいぶん起こっていますが、いいビジネスというのはまた別の話です。

現在の日本は、人口減少に加えて、急激な円高が企業に大きな打撃を与えています。しかし、私の関心を惹く企業が、日本にはいくつもあります。

羽田空港に降り立ったバフェット氏。普段はパジャマ姿での移動だが、初来日とあって「30分前にジャケットを着ろと言われた」(バフェット氏)のだという。

日経平均株価が以前よりも格段に安くなっていることもあり、私の個人資産のポートフォリオの中にも一社日本企業があります。当然のことですが、株価が下がることは、投資としての魅力が増すのです。5年後はさらに日本企業の株を買い足すでしょう。オリンパスの不正経理問題には大変驚きましたが、日本企業についての見方を変えるには至りませんでした。時々「あのようなこと」は起こるものだからです。米国ではエンロン事件が起きました。ヨーロッパやアジアでも同じようなことが起きています。オリンパスやエンロンによって、その他大多数の企業に対する投資姿勢が変わることはありえません。

写真左からタンガロイ社長上原好人氏とバフェット氏。バフェット氏は「私がエンジニアなら、タンガロイで働きます」と発言。

信頼できるもの、そして10年、20年、50年たってもみんなが欲しいと思うものをつくっていく事業なのか。これらが、私が投資判断するうえでの基準であります。それについて、見方はまったく変わっていません。日本のみなさんの孫の世代が、みなさんよりも豊かな暮らしをしていることは私が保証します。私の全ポートフォリオを日本企業にしても、問題なく運用していけます。年間7~8%の配当を得ることができます。日本の経済は、依然として繁栄を続けるのです。日本にはたくさんの投資の機会があります。

私たちは絶対に敵対的買収をしません。また、私たちが投資先を決めるために動き回って訪問することもありません。私たちは、連絡を取ってくる日本人、日本企業を待っているのです。ぜひ、私たちへ電話をかけてきてください。

(文中敬称略)

※すべて雑誌掲載当時

(佐藤ゆみ=インタビュー 山元雅信=取材協力 小倉和徳=撮影)