地方公務員は全国に約280万人いる。「お役人仕事で対応が遅い」「市民に寄り添ってくれない」といった声もしばしば聞かれるが、逆にあっぱれな仕事をする人もいる。地方公務員が認めた人に与える「地方公務員アワード」に選ばれた30歳男性をスポーツライターの清水岳志さんが取材した――。
埼玉県宮代町の役場に勤める伊藤遼平さん
筆者撮影
埼玉県宮代町の役場に勤める伊藤遼平さん

地方公務員が選んだ「本当にすごい地方公務員」はどんな人物か

「地方公務員アワード」をご存じだろうか。

地方公務員が、教育・警察・消防・福祉などジャンルを問わず「本当にすごい」と思う同じ地方公務員を推薦し、全国の候補者たちの中から審査で選んで表彰するものだ。

伊藤さんが受賞した地方公務員アワードの表彰状
伊藤さんが受賞した地方公務員アワードの表彰状(筆者撮影)

人口3万人の埼玉県宮代町の役場に勤める伊藤遼平さん(30歳)は、2021(令和3)年8月に、「あなたの存在が全国の公務員の可能性を広げ、さらなる活躍の土台を築きました」としてこの賞を受賞した。現在、全国に280万人余りいる地方公務員が認めた若き人材ということになるだろう。

肩書は「子育て支援課主事」。主な仕事は、子育てに関する施設の運営のほか、パート保育士の勤怠管理、子ども食堂の運営などだが、それに加えて「社会連携活動」にも力を入れている。今回の受賞はこの部分が特に評価された。

社会連携活動とはどんなものか。例えば、2021年10月に町内の施設で開催した「産後ボディケアストレッチ」という講座の開催だ。

バレーボールV.LEAGUEのDIVISION1(V1リーグ)に属する「埼玉上尾メディックス」の岩崎こよみ選手が同年5月に出産し、その後、競技復帰を目指していることを知った伊藤さんは、その復帰プロセスはアスリートではない母親の参考にもなるのではないかとチームや岩崎選手に相談して企画した。

講座当日は、産後1年未満の母親と赤ちゃんの7組が参加した。「産後うつの抑制にもつながる」「なかなか自分のために時間を使うことができないけれど、ゆっくりストレッチをして体が軽くなった」と大好評だった。

同年10月には、スペインで人気のスポーツのパデル(テニスとスカッシュを合わせたようなラケット競技)や、ブラジル発祥のフレスコボール(リオデジャネイロ発祥のビーチスポーツ)の日本代表選手3人を招いたイベントを運営し、地元の子供たちと楽しんだ。

2022年1月には、フェンシングの日本選手権で決勝戦に進んだ現役選手を招待して、「ふうせんフェンシング」を親子で楽しむ企画も立てたが、こちらも大盛況だった。