この件数が、実質的なノルマになります。上から提示された件数ですから、当然、その件数をこなさなければ、直属の上司の人事評価は下がりますし、何より自分たちの評価も下がります。

したがって、最低限、その件数を達成しなければなりません。これが、ノルマたるゆえんです。

また、税務署員にとって、件数だけが重要なのではありません。税務調査によって、納税額が増えるかどうかもポイントになってきます。

件数だけをこなして、「今年は大きな問題はありませんでした」では済みません。「会社に修正申告をしてもらって納税額を増やしてもらう」「所得隠しを見つけて追徴課税をする」などといったこともやらなければなりません。

この金額の部分のノルマについては微妙です。件数ほどはハッキリしていません。ただし、基準らしきものはあります。

たとえば、その部署の前年度の実績がわかりやすい目安になるでしょう。できれば、前年度の金額は超えたいところです。下回ってしまうと部署の評価が下がりますし、逆に上回れば、評価は上がります。

また、他の税務署の金額より、大幅に下回ることも避けたいところです。これは、税務署全体の評価につながってしまいます。そうした事情を勘案すると、「これくらいは納税額を上積みしたい」という、大体のラインは見えてきます。

したがって、税務署員は件数をこなすとともに、納税額を上積みするというノルマが課せられることになります。まず、この大前提を覚えておいてください。

これが、税務署員の弱点にもなってくるのです。

「税務署員もサラリーマン」税務署員の意外なホンネ

先ほど、わざわざ“ノルマ”という言葉を使ったことには理由があります。

「税務署員もサラリーマンである」ことを強調したかったのです。

窓の外を眺める若いビジネスマン
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※写真はイメージです

「経営者ではない」という意味で、サラリーマンは、つねに上司から評価され、その上司もその上の上司から評価されるという構造になっています。「自分の出世なんてどうでもいい」という人以外、自分の評価を気にして行動することになります。

税務署員もあくまでサラリーマンであることを踏まえて、税務署員が上司から評価されるポイントを整理してみましょう。

①税務調査の割り当て件数(=ノルマ)をしっかりこなすこと
②税務調査をしたときは、修正申告を取って、追徴税額を出すこと
③意図的な所得隠しを発見し、多くの追徴税額を出すこと
④納税者とはトラブルを避けスピーディーに調査を完了させること

つまり、税務署員はこの4つのポイントの逆のことを嫌がることになります。たとえば、税務署員にとって、わざわざ税務調査に入って何も見つけられずに帰るなんてことはあってはならないことです。