「年収1000万円で法人化すべき」は本当か?
個人事業主としてビジネスが順調だと、いずれ「法人化すべきか?」という問題にぶつかります。法人化というのは要するに、会社にするかどうか、ということです。
法人化すると、税金や社会保険料を抑えられる可能性があります。しかし、所得がどのくらいになったら法人化すべきかは議論があるところです。
よく聞かれるのが、「年収1000万円になったら法人化すべき」というものです。その理由は所得税と法人税の税率構造の違いによります。
個人の所得税は、5.105~45.945%の累進税率で、所得が増えるほど税率が上がります。しかし法人税は、一般的な会社であれば年800万円以下の所得に対して15%、年800万円を超えた部分は23.2%で、それ以上は上がりません。
そして、個人の所得が1,000万円ともなると、所得税の税率は33%ですから、法人税の最高税率23.2%よりも高くなります。このような理由から、「年収1000万円」が法人化の目安とされていると推測します。
しかし、私は「年収1000万円で法人化すべき」という意見に同意できません。
というのも、税金は所得税と法人税だけでなく、住民税や事業税、消費税などがあり、これらも法人化の影響を受けるからです。さらに、健康保険や年金などの社会保険料への影響も考える必要があります。
そもそも、法人化しても、その会社から社長個人に役員報酬を支払えば、それに対して所得税や住民税、社会保険料がかかります。つまり、役員報酬の設定次第で、さらに税金や社会保険料の負担は変わるということです。
私の考えでは、このようないろいろな影響を検討せず「年収1000万円になったから法人化」と決断することは勧めません。個人の確定申告書よりも、法人の申告書のほうが、作成が難しく、手間がかかりますしね。
法人化をするなら税理士に相談して、「確実に損はしない」というタイミングで進めるようにしてください。