学生側にある利便性

私自身は、学習者の利便性を高める活用方法や、子供の貧困対策や、不登校の子供・若者の学びのために子供・教育データを利活用することは必要だと考える立場の研究者である。

たとえば学生が別の大学に編入学した場合の単位互換認定は、現在はシラバスとノートのコピー等を学生が紙で提出し大学教員が確認する方式を採用している。

しかし編入前の大学での学習履歴をその大学と学生自身の承認が得られればデータ提出してもらうなどの方式が可能になれば、学生側の利便性も大きい。

シラバスやレポートなどもテキストマイニングのAI化などにより、編入先の大学の科目との共通性をある程度判定できるシステム整備も可能だろう。最終的な専門性は大学教員が確認するにしても、学習者、学校の双方にとってメリットはある。

校長ハラスメントやいじめ対策として

批判も多い学習履歴だが、学校で学んでも毎週1回面談に行かなければ履修認定しない、あるいは学校外での学びは認めないという校長ハラスメントに遭い、その履修が認められず成績が1(希望すれば空欄にできる自治体もあるが)のような現状ではなく、履修認定の基準を示し、校長が履修認定を電子承認していく仕組みの実現など、私自身は急ぐべきだと考える教育データ利活用の仕組みは存在する。

また教職員の校務負担軽減のためのデジタル化・オンライン化の仕組みは急務だろう。教職員1人1台端末や学校の通信環境整備など、必要なインフラ整備も含めロードマップで急ぎ実現されるべきことともされている。

私が学校現場で話を聞いてみたところ、いじめアンケートのオンライン化と結果を学校ではなく自治体で管理し情報保護する仕組みは、隠蔽いんぺい批判を避けるためにもあれば非常に助かる、という教員もいた。

このような利用方法については、教育データ利活用ロードマップのユースケースに示されたり、筆者自身も中央教育審議会で希望する不登校児童生徒のための履修認定におけるスタディ・ログ活用等を提案しているが、児童生徒や保護者・教員のニーズを反映していくためのルール整備や仕組みをどのように政府・事業者とともに構築していくかも、これからの課題である。