ゲームのトレーニングだけでは足りない

ゲームにも運動が関係あるなんて、大げさだと思う人もいるかもしれません。ゲームなんていすに座っているだけで、運動したからといって何も変わらないのでは? そう思うのも無理はありません。

ところがそれが変わるのです。ドイツ国立ケルン体育大学のインゴ・フローベーゼ教授はそのように主張しています。フローベーゼ教授の調査によれば、プロのゲーマーの心臓は1分間に160~180回も打っているそうです(静かに座っている時で1分に100回)。つまりプロゲーマーの体の中ではF1レーサーと同じくらいのストレスホルモン、コルチゾールが出ているのです。体も心もF1レース並みのスピードで作戦通りに動かなくてはいけないということです。

また、プロのゲーマーは1日に少なくとも8時間は練習をしています。心も体も負担が大きいはずです。

今ではeスポーツに高額の賞金がかかるようになり、小さなズルやごまかしも出来ません。つまり高いレベルを目指すなら、ゲームのトレーニングだけをしていては足りないということです。体のトレーニングもしなくてはいけないのです。

4分だけで、1時間の効果が

何か新しいことを始めたら、すぐに結果が出てほしいものです。運動やトレーニングに時間をかけるなんてまどろっこしいと思うでしょうが、どんな効果が得られるかをすぐに知りたいなら、続きを読んでみて下さい。

10歳の子供たちを調査した研究では、4分間運動しただけで(そう、たったの4分です)、その後1時間、集中力が高まりました。たった4分ならやる価値があると思いませんか。

別の調査では、12分ジョギングをすると、特に視覚的な集中力が高まりました。例えばゲームの画面を見つめている時に、目に見えた物をとらえ、それが何なのかを素早く理解することが出来るのです。これは10代の若者を使った実験でした。

この結果はたった1度、12分のジョギングをしただけで得られました。しかし長くやるほど効果は上がり、定期的に数カ月続けるとさらに上がります。

研究によれば、毎日体を動かしている子供や若者の方がストレスにあまり反応しない、つまりストレスに強いことが分かっています。プロのゲーマーがどれほどのストレスにさらされているかは、すでに説明した通りです。ストレスに強い方がゲーマーとしても当然有利です。

他にはどのような能力が必要でしょうか。マルチタスク能力(同時に色々なことが出来る能力)、作業記憶の能力(短期記憶のうち、何かをやっている最中に使える記憶力の容量が大きいこと)、計画実行能力(情報を整理して計画し、他のことに気を散らされない能力)……そういった能力も運動によって上がることが分かっています。

ノートを取る生徒
写真=iStock.com/xavierarnau
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