判断を誤らせる「買いたい病」

ここからは、不動産投資を行う際、特に初心者が陥りやすい失敗について説明していくが、その前に不動産購入時に忘れてはいけない大前提について確認しておきたい。それは、「不動産を購入する目的」だ。本来の目的を見失って資産を減らしかねない事態に陥るケースもあるからだ。

いざ収益不動産を買おうと思っても、買いたい不動産はそう簡単に手に入るものではない。自分が買いたいと思うような物件は、同じように多くの人がいい物件と考え、競争率が高くなる上に、売主も不動産業者も着実に高値で買ってくれそうな買い手を選ぼうとするため、経験の浅い買い手は不利になる場合が多い。

欲しいと思った不動産がなかなか買えないと、永遠に買えないのではないかと不安になり、焦る。本来、焦りは禁物だが、なかなか買うことができないと、いつの間にか、目的は収益性の高い「いい不動産」を買うことではなく、買うこと自体が目的になり、徐々に「買える不動産」に買い付けを入れるようになる。

そのような状況に陥ることを「買いたい病」に罹るという。「頭では理解しているつもりでも、つい気持ちが先走ってしまう」ことは、不動産に限らずいろいろな場面で遭遇することだ。だからこそ、最初はなかなか買えなかったとしても、「不動産はご縁」だからとグッと我慢して、本来の目的をかなえるための不動産を地道に探し、買い付けを入れていくことが重要だ。

不動産広告の「満室想定利回り」に用心せよ

収益不動産の広告を見たことはあるだろうか。不動産の概要や不動産価格の他に「満室想定利回り」という文字がある。収益不動産を買うとき、収益性が高いのか低いのかを判断するための重要な指標だ。

利回りの計算方法は、年間家賃収入を不動産購入費で割って算出する。例えば、不動産購入費が5000万円、満室想定年間家賃収入が500万円なら、満室想定利回りは10%。計算上は、不動産購入費用を10年間で回収することができるという意味だ。不動産購入費が1億2000万円、満室想定年間家賃収入が600万円なら、満室想定利回りは5%となり、この数字を比較すると、前者の物件の方が収益性が高いということになるが、この満室想定利回りを見るときは次の4点に気をつけなくてはいけない。

まず、満室想定利回りは、あくまでも「満室」時の家賃収入をベースに計算されていることだ。賃貸経営で満室を維持するのは実はかなり難しい。実際広告に出ている不動産も、満室でない可能性が高い。満室でなければ、この利回りは机上の空論に過ぎないということになる。

次に、新築物件にありがちだが、そもそも家賃の値付けに問題があるケースだ。例えば、地域相場と建物の仕様・設備を考慮して、新築の家賃が6万円しか取れない地域なのに7万円に設定すると、1棟10戸の賃貸住宅の場合、月10万円、年間で120万円もの差が生じてしまう。そのことを知らずに購入しても後の祭り。たとえ広告に想定利回り7%と表示されていても、実際は6%になってしまう。しかもそれはあくまで満室時の利回りだ。募集がうまくいかなければ、利回りはさらに下がることになる。