新卒採用に「採れなかったら採るな」

また、単にお金だけの話としてではなく、採用も同様のスタンスでいた。

「寮でもつくらないと、大卒の新入社員が来ない」という人事部に対して、「採れなかったら採るな。ここで人材を大量採用することは、上げで儲けることと一緒だ」として、寮などをつくってまで採用はしなかった。

その後バブルが崩壊し、多くの企業が不良債権で苦しんでいる中、ジャスコは、「何もやらない」ことで生き残り、それどころかその後大きく成長することができた。

「それ本当か?」を問い続け、自ら結論を出す

岡田卓也はものごとの見方として、「上がったものは必ず下がる。下がったものは、また上がる」としてとらえている。

東海友和『イオンを創った男』(プレジデント社)
東海友和『イオンを創った男』(プレジデント社)

つまり大勢が飛びつくようなものの裏を見るという慎重さを持っているのである。

「人の行く道の裏に道あり花の山」ごとく独自の見解を持っている。

情報の入手も一次情報か否か、それとも誰かを介しての経由情報か? 内容的にも結果情報か? 現象情報か? それとも限定的なことか、一般化情報か? と慎重に吟味する。そのことをふまえて懐疑的に「それ本当か?」という問いを自身に投げかけ、結論を出す。

要は軽々に世間の風潮や人の誘いに乗らない、いわゆる脇が硬い。だからバブルの際にも他企業のように現を抜かすようなことをせず本業に徹した。

これも家訓「上げに儲けるな、下げに儲けよ」を徹底する信念の強さがあってのものだろう。

「下がるときにお客様の役に立つのが本当の商人だ」

コロナ禍は生活を一変させた。外食はデリバリーにあるいは内食にとってかわった。リモートワーク、リモート学習による家庭内行動も大きく変化した。

そもそも従来のオフィスへの通勤を前提とした、会社の在り方や住居の決め方なども、今後大きく変わってくる可能性がある。

一方で、所得の減少による貧困層の増大と高齢者の貧困化、高所得者とそれ以外の格差等社会問題化の要素もあぶりだした。

いま、日経平均株価はじりじりと値を上げてきており、一時ではあるが3万円を超えた。

この局面を「上げ」と見るか、「下げ」と見るか。そして、どう行動するか。

「下がるときにお客様の役に立つのが本当の商人だ」

と岡田卓也はいう。

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