人は食べるためだけに生きられるわけではありません。喜びを知ることが究極の目的でしょう。だからそれが一流企業に入ることで得られると思えば就職すればいいし、芸術をまっとうすることで得られるなら芸術家を目指せばいい。

もっともその喜びも、人生の中のほんの一部でしょう。あとは背負うことばかり。でもね、「背負う」と思うか「背負わされている」と思うか。その違いはとてつもなく大きいと思うんです。

9大都市の芸術家数
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9大都市の芸術家数

芸術家になろうが一流企業に入ろうが、人生には迷いも不安も葛藤も必ずついてくるもの。背負うものが増えるたびに、ピュアだった自分に異質な要素が混じって濁っていくような気がするかもしれない。だけど怖がらなくていいんです。水が濁ると先が見えにくくなるけど、だからこそしっかり見ようと目を凝らすじゃないですか。そうやって葛藤に立ち向かい、濁りも臆せず取り込んで、新しい色の自分をつくっていけばいい。

芸術は「ときめき」です。僕だっていつも不安だし、この先自分がどうなるかなんてわからない。

だけど初めからゴールのわかっているものなんて、仕事にせよ何にせよ面白くないでしょう? サバイバルの中にアンビリーバブルなことがあるからこそ、ときめきがあるし夢中になって前へ前へと走る。そしてときどき立ち止まる、葛藤する。いいじゃないですか。

芸術は創る側も鑑賞する側も「こうすべき」という正解はありません。だから楽しいし深く味わえる。人生だって同じですよ。

(石田純子=構成 岡倉禎志=撮影)