一方、同じ要介護3でも「介護費用は月40万円」という人もいる。商社勤務の50代男性は、月2回、郷里へ通い介護を続けて7年目。デイサービスは週3日、ヘルパーを自費でプラスして、朝、昼、夜と毎日上乗せし、配食サービスも毎日利用している。「私の交通費も入れてだが、父親が残した財産があるからやれる」と言う。まさに介護費用といってもピンからキリまで。それもない袖は振れぬのが定め。

思い余って、親孝行と介護費用節約のために退職という人もいるが、私は勧めない。一見、介護費用を払うより、自分でまかなうほうが経済的と思うかもしれないが、辞めて共倒れになった例をイヤというほど見てきたからだ。

真面目な人ほど介護を仕事化して過剰労働になったり、会社を離れることで疎外感を味わったり、地縁のなさから情報過疎に陥ったりする。介護ストレスからアルコール依存症になり、40代で認知症の母親に先立った元技術者の孝行息子の例などは、今でも胸が痛む。

では、イザというとき現役世代が自分も親も大事にするマネーの流儀とは? それは自らの仕事は絶対に辞めず、介護サービスを上手に“買う”ことだ。

その秘訣は貯金ならぬ、早めの「情報貯蓄」に尽きる。情報があれば親の所得内でも効率よくサービスを買うことも、年金だけの世帯なら低所得者向けの軽減策の利用も考えられる。

さらにもう一つ、働いていればこその錬金術がある。それは有給休暇はもとより、法律で定められた介護休業や休暇、企業独自の介護支援制度や福利厚生、ワークライフバランス推進制度などの有効活用だ。少子高齢化で「仕事と介護の両立」がスタンダードになるこれからは、制度利用の実績は次世代への財産にもなる。

先の見えない介護だが、終わりは必ずやってくる。だからこそ現役世代は、目先のマネーに惑わされず、自分の生活基盤や生きがいを持ち続けることが大切なのだ。