2025年に女性管理職120人を目指して

【木下】一連の女性活躍の取り組みに関して、男性から「女性を優遇しすぎだ」といった声は上がりませんでしたか?

【野間】上がりましたが、会長がメッセージを発信したり、プロジェクトメンバーが直接説明したりといったことを続けるうちに理解してもらえるようになりました。女性活躍推進は社の発展に必要不可欠な施策で、放っておくと男性優遇になるからこそ「期間限定」で女性の背中を押していくのだと。加えて、確かに研修等の育成の機会は女性の方が多くなっているけれど、その分結果を求めていくとも伝え続けました。

また、管理職対象の研修や講演会でも同じことを伝えるようにしていました。欠席者にはDVDを送って感想を書いてもらうなど、全員に理解してもらうために徹底的に追いかけましたね(笑)。それから8年が経って世の中も変化し、今では女性活躍推進の理由を問う人もほとんどいなくなりました。

【木下】残る課題は何でしょうか。たとえば望まない転勤への対策や、男性育休、男性の家庭参画といったことについてはどうでしょうか。

【野間】転勤は当社にとっても課題ですが、今のところは制度ではなく、家庭の事情で転勤できずに離職した人を再雇用する個別対応を実施しています。

また男性の育休については、子どもが産まれた男性とその上司にハンドブックを送るなどして取得を促しており、2020年度の取得率は約93%、平均取得日数は約13日でした。男性の家庭参画では、育休を取った本人や上司、社内結婚ならパートナーとその上司にも参加してもらう「育休復帰者セミナー」などを実施しています。これを始めてから、男性育休に上司の理解が得られないだとか、女性ばかりが育児をしてキャリアにブレーキがかかってしまうといったことは少なくなってきました。

こうしたさまざまな取り組みを通して、男性社会だった頃の風土も変わってきています。プロジェクトを始めた8年前に比べて女性比率はかなり向上しましたし、女性管理職数も3倍以上になりました。女性の職域も拡大し、出産や育児を経ても活躍を続ける女性があらゆる層で増えてきました。この「実際に女性が活躍している」という事実が、風土が改革されたということを示していると思います。

【木下】ご自身のキャリアについて、また御社の女性活躍推進について、今後の目標や展望をお聞かせください。

【野間】入社当時は、今のようなキャリアは思い描いていませんでした。自分の知識の範囲内で考えていたので、こうしたいなと想像できる範囲も狭かったのだと思います。ここまで成長できたのも、環境や人に恵まれ、さまざまな機会を通して視野を広げてもらったおかげです。これからも「チャレンジして成果を出す」「成長する」の2点にこだわって、会社に貢献していきたいですね。

そして女性活躍推進プロジェクトでは、「2025年に女性管理職120人」を目指しています。現状から考えると少し背伸びした目標ではありますが、育成に力を入れながら少しでも近づけるよう進めていくつもりです。さらに、当社のダイバーシティ戦略は、今は女性、障害者、ベテランといった属性ごとに取り組みを行っていますが、究極的には属性に関係なく、一人ひとりが能力を最大限発揮できるような風土にしていきたい。そこを目指して、引き続き一生懸命取り組んでいきます。

構成=辻村洋子

野間 友惠(のま・ともえ)
ダイキン工業 人事本部人事企画グループ長(部長)

2007年、新卒でダイキン工業株式会社に入社、人事本部に配属。グローバル人事、教育、制度設計などに従事し、11年にトップ直轄の女性活躍推進プロジェクトのメンバーとなる。ダイバーシティ推進グループ担当課長を経て21年より現職。現在、グローバル全体の人事施策構築や産学連携プロジェクトなどを担当。

木下 明子(きのした・あきこ)
プレジデント ウーマン編集長