女性活躍推進は「経営施策」

【木下】女性管理職の育成加速については、20〜30代の若手女性を選抜してリーダー研修を実施されているそうですね。その理由や選抜基準を教えてください。

【野間】現状、当社は女性社員比率が17%、女性管理職比率が6%とまだまだ男性社会の会社です。2005年から女性の積極採用を続けて人数的には増えたのですが、世代的にはこれからライフイベントを迎える30代後半までの女性が7割を占めています。そのため、全社的な取り組みの対象としては、この世代の女性社員とその上司に当たる管理職層を中心に据えました。

30代半ばを過ぎると、仕事に慣れてきて自分の得意不得意もわかり、「私はこのままこの道で行くんだな」と自ら道を狭めてしまいがちです。その前にリーダー研修を受ければ、視野が広がって思っていた道以外のキャリアもあると気づくことができますし、出産や育児などのライフイベントを経ても仕事への意欲を維持しやすくなります。実際、この点は若い女性社員の意識改革にかなり効果的だったと感じています。

また選抜は、部署ごとに意欲や姿勢に秀でた女性を挙げてもらい、その中から年間20人に対して研修を行っています。これによって、女性社員の中に「去年は先輩が選ばれたから今年は私かな」という雰囲気が生まれ、仕事への意欲向上につながっているようです。

撮影=小林久井(近藤スタジオ)

【木下】ご自身もその20人に選抜されたそうですが、実際に研修を経験されていかがでしたか?

【野間】私自身、当時は明確なキャリアを描いてはいなかったのですが、研修を通して女性社員への期待やポジションが上がることの醍醐味などを知り、意識が大きく変わりました。この先ライフイベントがあるからと昇進をためらうのではなく、チャレンジしてみてから考えればいいと思えるようになりましたね。

研修運営の立場からは、参加者の意識改革に特に効果的だったと感じたのは、本人たちが社内外のリーダーにインタビューするというものでした。身近なリーダーに話を聞くことで「管理職って大変だと思ってたけど自然体でいいんだな」と気づき、身構える気持ちが少なくなっていったようです。

【木下】女性管理職を増やすには、本人のそうした意識変化も重要ですね。一方、先ほどの取り組み方針の中には「数字合わせの女性優遇の登用はしない」という項目がありましたが、これはなぜでしょうか。

【野間】当社は育成の機会は女性の方が多いですが、幹部や管理職への登用については、男女問わず「十分に育った人」のみとしています。能力や経験が足りない人を管理職にしても、会社の発展や成果創出にはつながらないからです。当社の女性活躍推進は福利厚生施策ではなく、今後の会社の発展を支える経営施策。数字合わせの登用は、そうした成果につながるとは思えません。