「若いころは、なんでも一番になりたくて常に全力! 短距離走をしていましたが、50歳手前の今は心地よいペースで走れるジョギング走者のようになりました」。そう当時を振り返るのは、チューリッヒ生命マーケテイング・コミュニケーション部部長の大野千奈さん。キリンビバレッジに新卒入社後、まったくの異業界に3度の転職を経験したという。大野さんの働き方をガラッと変えた七転びのエピソードとは――。

キャリアのはじまりはトラックの運転

広告宣伝の世界に惹かれたのは高校時代。高2から一年間かけて自分の興味あることをまとめる「個人課題研究」があった。大野さんは「人とモノの流れ」をテーマに選び、それがマーケティングの仕事を目指すきっかけになったという。

チューリッヒ生命 マーケテイング・コミュニケーション部 部長 大野千奈さん
写真提供=大野千奈さん
チューリッヒ生命 マーケテイング・コミュニケーション部 部長 大野千奈さん

「世の中は華やかなバブル期で、DCブランドや百貨店が元気なときでした。CMなど広告も注目され、コピーライターがもてはやされた時代。言葉の力ひとつで、『モノを買いたい』という人の購買意欲を喚起するのはすごいことだと思いました。マーケティング論の本もたくさん出ていて、調べるほどに面白くなっていき……、将来は何かそういう仕事ができたらいいなと考えるようになりました」

また、チームをまとめる仕事がしたいとも考え、志望したのは企業の宣伝部。新卒で入社したのは、飲料メーカーのキリンビバレッジ(現・キリン)だった。

「キリンの『午後の紅茶』がとても売れていて、小泉今日子さんのCMがすごく好きでした。最初は営業部に配属され、トラックを運転して飲料を運んでいましたが(笑)、ずっと『宣伝部へ行きたい』と言い続けていたら、たまたま空きができて2年目に配属されたのです。すごくラッキーでした」