アジア通貨危機を境に変化を遂げた

その一つが化学製品の緩やかな増加だ。対韓輸出に占める化学製品の割合は1988年1月時点が約14%であり、アジア通貨危機直後までおおむね10%台前半だった。その後、1998年秋口ごろから化学製品の対韓輸出は徐々に増加し、2000年代に入ると増加が勢いづいた。その背景には、次のような韓国経済の変化があった。

コンピュータ
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1990年代、サムスン電子は東芝からNAND型フラッシュメモリーの技術供与を受けた。それは、アジア通貨危機後の韓国経済の回復と成長を支えた重要な要素だ。また、アジア通貨危機の発生によって韓国では、サムスン電子など一部財閥系大手企業に経営資源がより集中した。

つまり、アジア通貨危機を境に、サムスン電子などは、それまでのわが国からの技術移転を活かしてメモリ半導体や家電の大量生産体制を強化し、価格競争力を発揮し、米国のIT先端企業の成長などを追い風に半導体などの輸出を増やした。

そのために、原材料や生産工程で用いられる部材としてわが国の化学製品への需要が高まったと考えられる。なお、アジア通貨危機の発生を境に、一時は対韓輸出の3割程度を占めるに至った一般機械のウェイトは低下した。しかし、2015年頃からは半導体関連の装置需要が高まり、韓国向けの一般機械輸出は増加に転じた。

ファウンドリー事業で先頭に立ちたいが…

以上から、わが国の対韓輸出は、より微細な素材(化学製品)やより精緻な機械にシフトしてきたことが分かる。今後、その傾向はより鮮明となる可能性がある。

足許、韓国の半導体メーカーはファウンドリー事業をより重視しているようだ。サムスン電子はファウンドリー最大手の台湾積体電路製造(TSMC)とのシェアの差を縮めたいようだ。SKハイニックスもファウンドリー事業の強化を重視しているとみられる。その背景には、中長期的なメモリとロジック半導体の需要拡大期待があるだろう。

その一方で、TSMCは前工程で重要な微細化技術に加えて、検査や組み立て専業メーカーが担当してきたパッケージングなど後工程技術の向上に取り組んでいる。世界的に半導体の不足は深刻であり、その状況が2023年ごろまで続く可能性がある。TSMCは半導体生産の総合力に磨きをかけ、シェアの拡大を目指していると考えられる。

韓国勢がファウンドリー事業に取り組むためには、微細化だけでなく後工程で必要な部材や装置(機械)の調達力を高めなければならない。自社ブランドでのメモリ半導体生産も行うサムスン電子とSKハイニックスにとって、台湾勢よりも有利な立場でわが国から半導体の部材や製造装置を調達できるか否かは、事業戦略を左右する要素だろう。