テレビにツッコミを入れることで思い込みを防ぐ

ヒント1 テレビは「ボケ」、自分は「ツッコミ」

私の両親は、テレビに向かって悪態をつくのが習慣でした。

「勉強ばかりしていると人間的に問題がある子が育つ」というコメントが流れてくると、親は「まともに信じたらバカを見るで。学歴はあったほうがいいに決まってるやないか。その証拠に、お前の通ってる塾にもテレビ局の子がいるやろ?」とツッコミを入れるのです。

我が家ではそれが日常の光景でした。私も、テレビはイチャモンをつけながら観ることにしています。なにしろ、テレビがスキーマを刷り込んでくる力は、強力無比です。

テレビに対して無防備でいると「こうするべき、ああするべき」「これもダメ、あれもダメ」と刷り込まれるばかりで、人生が窮屈になる一方です。

メタ認知的なモニタリングで「自分はメディアの影響を受けすぎている」「コロナ不安を煽る番組ばかりで、いつも不安を感じている」と自覚できているなら、刷り込みの供給源であるテレビやSNSを思い切って遮断するのもいいと思います。

テレビを見てもいいですが、そのときは必ず「疑いながら」視聴しましょう。自分がツッコミならテレビはボケ。ボケの言うことをまともに信じるから、おかしなことになるのです。

善でも悪でもない「グレーゾーン」に目を向ける

ヒント2 事件の加害者の「弁護人」をしてみる

「テレビに反論する」のもいいと思います。

白と黒、善と悪をはっきり分ける二分割思考を押しつけてくるのがテレビのやり口ですが、たとえばそこで、「悪」の側を擁護してみるのです。

これにより、二分割思考から抜け出し、グレーゾーンを許容する態度を養います。たとえば「自分があの大事件の犯人を弁護するなら」と考えてみる。

テレビは、犯罪者の極悪非道ぶりばかりを報じますが、弁護人はそれを疑うのが仕事です。弁護人の目で事件を眺めると、犯人は経済的に困窮していた、毒親に育てられた、いじめにあった、精神疾患で通院していたといった、情状酌量する余地を見つけられるかもしれません。

たくさんの疑問符、頭にも疑問符の袋をかぶる若者
写真=iStock.com/BlackSalmon
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あるいは、目撃証言が一致しているのは、じつは警察の誘導の可能性が高いのではないか、などと考えてみることもできます。

そうやって、善と悪のあいだにある「グレーゾーン」に目を向ける練習をするのです。だからといって犯罪が許されるわけではもちろんありませんが、グレーゾーンに目を向ける習慣を身につけると、「世の中には100%の善も、100%の悪もない」という発想にたどり着けます。

そういうスタンスで見てみれば、きっと、不倫騒動で謹慎中の芸能人も、コロナ対策で後手後手の首相も、弁護できる余地はあるはずです。